鬼の妹(1/2)

※コラボ作品です
※雄斗様宅元親妹主が登場します

こそこそ、と。そう…こそこそと歩く目立つ怪しい人影があった。
「おい貴様」
「わああっ!」
背から声を掛けたらソイツは大仰に驚いてみせた。
高い声からすると少年…?いや、違うか。
ビックリした、と呟き振り返った姿を正面から捉えたら間違えようもなく女だった。
私と同い年くらいだろうか。
女は(人の事は言えないが)珍しい銀髪をしていて……それにしてはどこかで見た覚えがある気がする髪だな…。そう、わりと最近、頻繁に見ているような…。
「あーあー、見つかっちゃったよ」
「………」
間者にしては危機感が薄い。
暢気な声に気が緩みそうになるのを堪えて私は刀に手を掛けた。
「見掛けん顔だがどこの手の者だ………答えによっては、斬る!」
言って刹那で女との距離を詰める。答えを聞いてない、なーんてツッコミはいりません。
胴を薙ぐ刃。
しかし女は危うからず斬撃をかわし、
「うわっと、ちょっ、ちょっと待ってくれよ!」
「ちょこまかと……逃げるなッ」
軽やかな動きで塀の上にまで逃げた。
ハッキリ言って避けられると思ってなかった。この女、相当出来る。
本気で掛からないと、
(私の身も危ないか)
先程以上の速さで女へ迫り居合いを抜く、
「待ってくれって!俺は兄貴に会いに来ただけなんだっ」
寸前。女の慌てた声に思わず手を止めた。
「兄…?」
そういえばこの女を見ていると既視感が…。


「そうか…長曾我部の妹だったのか。刀を向けてすまなかったな」
「分かってくれたんならいいって!」
私は今、侵入者…もといこの女を長曾我部の下へと案内している。
名は長曾我部奈々、先も述べたように長曾我部元親の妹だそうだ。…初耳である。
あの男、妹がいる事隠してたな。
奈々は兄を驚かせるために秘密で遊びに来たんだそうだ。先触れを出したら長曾我部に知られてしまうと考えての侵入劇となったらしい。…とりあえず警備について見直さないといけないな。
通りがかりの女中に聞いたが長曾我部は刑部の部屋にいるらしい。
…?変わった取り合わせだ。
疑問に思いつつも刑部の部屋へと足を向け、そして、
「刑部入るぞ」
「兄貴ー!遊びに来たぞー!」
言葉と共に障子戸を開け放つ。
「勘弁してくれよ大谷さん。俺ぁこれ以上は…!」
「ぬしが溜めた政、ぬしが出来ぬ道理など無し」
「政宗様!筆が止まっておられますぞ!」
「小十郎…ちょっと休憩にしねェか…?」
「なりません!」
…。
修羅場ってた(笑)
死んだ魚の目のような光のない目で長曾我部と伊…ごほんっ…青いのが刑部と片倉の監視の下、積み上げられた書類を前にしている。どんよりとした空気で気が塞ぎそうだぜっ☆
あ、そういや今日は片倉と一緒に勉強合宿もとい執務合宿するって刑部が言っていたか。
…なんて胃の辺りがもったりと重くなる集いなんだろう。

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