変人兄弟とおまけの私

※コラボ作品です
※コウ様宅光秀弟主が登場します


「兄上、家出で出家なんて冗談も大概にしてくださいよ」
苛々とした口調を隠そうともしない男相手に、
「んふふふ…私はあなたの兄ではありませんよ。そう!私は天海!誰よりも命の価値を知る者っ!」
某怪僧は恍惚度を上げながらそう宣い、ゆらゆらゆらゆら不気味に揺れる。
こんなやり取りをもうかれこれ…四半刻見せられ続けているのだが私は。こんな時どんな顔をしたらいいのだ、笑……うのはなし!だったら怒るか…………効きそうにないな。
しかしさすがにそろそろどうにかしたい、
「…なあ、私はこの場に必要か…?」
「ええ」
「はい」
そう思いせっかく気力を振り絞って声を出したってのに同時に肯定を返されてげんなり。こんな時だけは仲良しこよしか。
これはアレだな、彼奴が…自称明智光秀の弟信教がいきなり大阪城に乗り込んできて天海を殴り飛ばした場面を目撃しちゃったのが運の尽きだったのだろう。多分今日の星座占いは最下位だ。
まったく金吾は何をやっている、こーゆうのはヤツのポジションだろうに今日に限ってあの鍋虫の姿を見かけない。そう言えば明…天海が妙に機嫌良さげに不気味な笑い声を上げていたのは……理由を考えるのが恐ろしいのでその思考はシャットアウト。
「聞いてくださいよ三成殿」
「聞きたくないッ聞きたくないぞ私はッ」
「こんな気持ちの悪い兄上ですが…これでも奥方がいるんですよ、しかも兄上にはもったいない程の出来た人!そんな人をほっぽり出して本当に何がしたいのか私には分かりません分かりたくもありませんね」
私の拒否なんか歯牙にもかけず信教は好き勝手に語る。
成る程、この兄弟は人の話を聞かない辺りそっくりだな。
怒りを通り越して呆れが私の体内に満ち、それは重苦しい溜め息となって排出された。
「いいじゃないですか。ちゃんと金吾さんから禄…いえ、お布施をいただいているのですから煕子に迷惑はかけてません」
「あくまでも僧侶設定を貫く気か」
しれっとした声で怪僧。
顔の半分は変なマスクに覆われてよくは分からないが絶対に腹立つ表情をしているだろう。
「そういう問題ではないでしょう!…大体何故謀反なんて起こしたのですか」
あ、やったんだ本能寺。
魔王は関ヶ原開戦間近の今でも元気にぶるぁぁぁしてるからどうした事かと思っていたがちゃんと謀反ったのだな。まったくもって喜ばしい事ではないが。
「愛故にですよ、愛故に…くくく」
「気持ち悪い。心底気持ち悪い、吐きそうです」
信教は言葉の通りにおえっと顔を歪める。
せっかくのイケメンなんだからそんな顔するのはやめなさい。
とゆーかよかったよ、信教が天…明智のような倒錯した嗜好の持ち主じゃないとその言葉から分かってよかったよ。「それなら仕方がないですね…フフ…」とか納得されたらどうしてくれようかと思ったぞ。
まあとにかく私が言いたいのは、
「おやおや、兄に向かってその口の利き方とは…酷い弟だ…んふふふっくくくくっ」
「兄じゃないんでしょう?天、海、様っ!!」
痴話喧嘩、もとい兄弟喧嘩は他所でやれって事だ。

(7/9)
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