一寸丹心を貴方に(2/2)

「どうされた片倉殿。」
「…止めてください壱矢さん。(苗字とか呼び慣れてないから困る。)」
「一応お前の方が位は上だろ?」
「だからって、嫌味ですか?…今人前じゃ無いんですから止めてください。」
「じゃあ、お前もその面倒な喋り方を止める事だ。」

縁側の外に長い足を放り出し、こちらをニヤニヤと笑いながら(吉継とそっくりだ、類は友を呼ぶなホントに)見てくる杉原…否、石田壱矢。
つい先日、みつに婿入りした為に苗字が替わったのだ。

「んで、さっきのは何だったんだ小十郎。」
「……妹の様に可愛がっている子が結婚してしまった、と思ってただけだ。」
「お前…二十八にもなって女々しい奴だな。」
「三十五のオッサンに言われたくねぇな。このロリコ…(いや、これ言ったら駄目か。)」
「ろりこ?何だそれは?」
「…何でもない。(十七も年下の子と結婚だなんてロリコン以外に何があ…いやいやこの時代では珍しくない、珍しくないぞ!だって、みつも良い年だし二十過ぎたら婚期遅れって言われるし、それにみつの白無垢マジ綺麗だったし…ってそうじゃねぇだろぉおお!?)」

あわあわと、どう言い訳しようか考えている(思考があっちこっちしているが)私の横からぶふっ、と吹き出した音が聞こえた。
……失礼じゃないか壱矢さん。

「お前は良く表情が変わるな、見てて面白ぇ。」
「…嬉しくねぇんだが。(あぁもう、どうしたもんかね…。妹分な子と尊敬している人が結婚するのって結構複雑だ…。)」
「まぁ、お前は初めて会った時から変だったからなあ。」
「……。(うわぁああ!!言っちゃう!?それ言っちゃう!?マジであの時恥ずかしかったんだから止めてくれよ!!)」
「まぁ何だ…妹君を取って済まなかったなぁ?(ニヤリ)」
「(は・ら・た・つ〜〜!!)……みつを育てたのは俺だし、壱矢さんの知らないみつを俺は知ってるぜ?(反撃)」
「……そんなもの、これから知っていけば良いだけの話だ。なんせ"夫婦"だからな。(切り返し)」
「ぐ…ぉ、俺の方がみつに慕われてるし!(負け惜しみ)」
「……何時まで持つか分からんだろう。」
「……。」
「……。」


「壱矢!兄上!」


「「!?」」
「兄上!何を声を荒げていらっしゃるんですか!」
「いや…あの…壱矢さんが…。(嘘だけど…。)」
「壱矢!貴様兄上に何かしたのか!?」
「何もしとらん!」
「嘘をつけ!でなければ、兄上が声を荒げる訳がないだろう!」
「嘘ではない!だから刀をしまえ!」
「問答無用!」
「誤解だ!堪忍してくれ!」
「良いからそこに直れ!」

途中から私をほっぽ居て痴話喧嘩を始める二人。(ま、原因は私だけど)傍から見るとなんと微笑ましい事か…。

…あのね壱矢さん、私ホントは壱矢さんに感謝してるんだよ。
だってみつのその隣は、秀吉にも、半兵衛にも、勿論私にも埋められない。壱矢さんだからこそ埋めてあげられる何かがあると思うんだ。
みつの顔見たことある?
壱矢さんといる時、明らかに前より良い顔をする事が多くなったんだよ。
だからさ、ちょっと不器用だったけど私なりの餞別として受け取ってください。

二人に幸多からん事を…。





一寸丹心を貴方に





(小十郎!いい加減おみつを止めてくれ!)
(頑張ってください。(ニッコリ))
(止まれ壱矢ぁああ!)

(3/3)
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