蒼天と共に輝くは銀の月

どうも、こんにちは。
伊達軍の一武将の篠崎蒼希です。
今は大坂城にいます…って、誰に言ってんだ僕は…。
これじゃあ、危ない人じゃん。

それは置いといて、小田原の折に三成によって連れてこられた僕だけど、正直な所、三成が何をしようとしてたのか全く検討もつかない。

その本人は気まずいのか来る気配はな……いや、今来たのかな。
何かこの部屋の前でうろうろしてるけど。
本当に何がしたいの三成…。
 
「早に行け」
「まままま、待て刑部ッまだ心の準備が…!」
「うぜえ」

二人の会話が聞こえてくる。
そうか、三成は心の準備が整っていなかったのか。

…うん、でもこのままというのも如何なものかと思うんだ。
だって、埒が明かないじゃないか。

「三成…僕に何か用事?」

これで素直に入ってくるかと思ったけど、世の中そう上手くはいかない。

「あわわわ…私はいないって言って!」
「とっとと行け」

結局、吉継君が後押しするんだ…。




「邪魔をするぞ、蒼天の」
「待て刑部!ストーーップ!私はッ「やあ、いらっしゃい…吉継君、三成」…………」

吉継君に襟首引っ掴まれて強制入場してきた三成。
あの様子だと三成の拒否権は無さそうだ。

ぎゃあぎゃあ騒いでいたけど、僕と顔を合わせた途端に静かになった。
僕の顔を見て静かになる事もないじゃないか。
何時も通り(貼り付けているとはいえ)笑顔で挨拶したのに…。 

座り込んだ三成は黙り込んで固まっている。
時折ちらちらと吉継君に視線を送るのは助けを求めているという事か。
吉継君って、ホント三成の保護者?
まるで、小十朗や佐助だね。

「ホレ三成…蒼希に何ぞ言う事があるのではなかったのか?」

吉継君が促して、暫くしてから

「蒼希ッ!」
「うん?」
「っ…………その、悪かった……無理やり攫ったりして……」

絞り出すように言った三成。あの状態からよく頑張ったよね。
まぁ、まだ項垂れたままで目を合わせるのは無理か。
それにしても、小田原の件を気にしていたんだね。
 
「君は僕を連れて来たことを後悔しているのかな?」
「言い訳はない…そして後悔はしていない!反省もしていないッ!」
「『ない』尽くしか…ヤレ呆れた」

勢い良く顔を上げての力強い言葉。
でも、すぐに勢いが落ちて三成は背を丸めた。

三成の言葉には驚いたなぁ。
え、驚いたように見えない?悪かったね。

「それでこそ君らしい」

思わずくすりと笑いを零した。
そして、僕は三成の手を取り言い聞かせるように言った。

「本当に嫌だったら僕はあの時君の手を振り払ったよ」
「し、しかし…」

三成はまだ悄気返った様子だ。
はぁ、三成って政宗並みに手が掛かるね。
少し肩を竦ませチラリと吉継君を見る。
ごめん、僕にはどうにもならないや。

「三成よ茶でも淹れてこい」
「刑部ゥッ私は今取り込み中、」
「三成、君の淹れたお茶が飲みたい。…ダメかな?」
「分かった!すぐに淹れてくるッ!!」

勢い良く飛び出して行く三成。
あぁ、三成に尻尾が見える…。
 
「ふう……蒼天のよ、あまり三成を弄んでくれるナ」
「嫉妬かな?」

くいと口端を上げて笑えば、彼もまた笑った。

「…、ヒヒッそうよソウ。ぬしが三成ばかりに構いおって悋気に狂いそうなのよ」
「っく、くくっ……心にもないことばっかり」

堪え切れずに肩を震わせば、吉継君の溜め息が聞こえた気がした。


蒼天と共に輝くは銀の月


(三成って素直すぎて何時か騙されそう…)
(言うてくれるな。その素直さが三成の良い所よ。)
(ふふ、そうだね。)

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