陰陽襲来!(2/2)

「まさかふて寝するほど落ち込むとは…」
「せめてあの巨大野菜や魚を見たかったらしい。…ワシも結構興味があったんだが」

気持ちはすごい分かる。何だかんだでぼくも探してたから、巨大食材。
しかし残念ながら、ぼくの領域からも品種改良からも、巨大食材は見つかっていない。というか見つかったらすぐ本家に献上している。
三成くんは、鍋が無ければせめて畑や釣りに行くつもりだったらしいが、無理だと分かってしょぼくれてしまった。

「つっても、あの鍋あったの烏城ですからね。長曽我部さんのところだと、鯨並みのサメが釣れるらしいですし…」
「ああ…そういえば元親のステージ、サメが大量に吊らされていたな」
「てか家康さん、前に巨大エビフライ持ってませんでした?」
「アレは百年に一匹とか、そんな海老だったと思うぞ。もう食ってしまったが」

もったいねえ!
…しかしそうなると、巨大鍋は将来作れるかもしれない。戦中には作らないけど、いつか作れたら三成くんたちも呼ぶか。

「さて、じゃあぼくそろそろ準備しに行きますね」
「?なんの準備だ、金吾」
「もちろんスイーツ作りですよ、三成くん元気づけなきゃ。家康さんどうしま」
「スイーツだとお!!」

すぱーんと開けられた襖から、刹那の速さで三成くんが飛び出してきた。甘党にしても復活早すぎやしないか。

「巨大鍋が見れなかったのは正直残念だが、まだ本命の洋菓子がある!」
「あ、こっち本命だったんだ」
「金吾、ワシは菓子よりイタリアン料理食いたい」
「…うちはレストランじゃありませんよ!!」

どうやら三成くんは洋菓子目当てにも来たみたいだ。家康さんも洋食目当て。
気持ちは分からなくもないんだけど、本来ぼくたちは武将なんだから料理を作ったり食べに来たりな関係は…今さらか。

「ちなみにお二人様、いつまで御滞在で?」
「明日帰るぞ」
「早っ。じゃあクリーム系は作れないね三成くん」
「何だと!?」

幸いにもここ筑前は、ぼくが小麦を育てるのを推奨しているから、小麦粉は問題なく使える。
乳製品もなんとかクリームにバターにチーズと一通り作れる。ただしクリームは作るのに半日から一日はかかる。
ピザを作るんだったらティラミスにも挑戦したかったけど、断念して適当にパウンドケーキでも作るか。

「でも出来上がるの、夕餉になりますよ?」
「構わない。しかし本当にクリームは作れないのか」
「一日じゃ無理だよ」
「God damn!」
「ははは。では待っているのも暇だ、ワシにも手伝わせてくれないか」
「え?でもお客様だし」
「招かれざる客だがな」

ガシャンと音がしたので振り替えると、三成くんが武装を解いていた。どうやら彼も料理に参加するらしい。
…正直、不器用な家康さんに頼むのは気が引けてたから、助かった。

「…じゃあお願いしようかな!すぐ横に牛舎があるから、家康さんは牛乳を持ってきてください」
「分かった!」
「三成くんは井戸から水を汲んで厨に運んで。ぼく畑から野菜採ってくる!」
「おい貴様、さりげなく力仕事を押し付けていくな!」

君たち『男』なんだからいいじゃないか。

…なんて口が裂けても、前世の記憶を明かしても、言えないんだよね。
もしかしたら、いつか話せる日がくるのだろうか。
いつか、ぼくたちのこんな無邪気な関係が終わってしまうのだろうか。

家康さんは東軍総大将に。
三成くんは西軍総大将に。
ぼくは――。


「……え?ちょ、なにこれ!?み、三成くーん!家康さーん!!」
「いきなりどうしたんだ金……!?」
「これは…か、カボチャ、か?」
「いや……」

「「「おばけカボチャ…!?」」」

突如畑に現れた、山ほどの大きさをもつカボチャはまさにおばけ。
集まり始めた城の者に話を聞いても、誰も大きくなったところは見てないという。

「ぼくたち、ホントとんでもない世界に転生しちゃったんだね…」
「「BASARAだからな」」

結局、このおばけカボチャを豊臣に献上するのにホンダムさんを使ったため、二人はもう二日滞在することになった。
三成くんは念願の巨大野菜も目に納め、蜜柑のショートケーキも腹に納めて大満足。
野菜が全滅したのでピザは出来なかったけど、家康さんと一緒にいびつなパスタを作った。

…なんかシリアスなこと考えてた気がするけど、忘れちゃったな。
というかそんなこと考えている余裕なんて今はない!

「何でぼくも大阪に行かなきゃならないんですか!」
「あんなデカいカボチャ、金吾でないと調理できないだろ?半兵衛殿からの命令だぞ」
「だからって…!」
「そ、そうだ家康!私と金吾は船と馬で帰」
「二人ともしっかり捕まっているんだ、行くぞ忠勝!」
「「イヤだああああ!」」

高度何千メートルの雲の上。
ぼくと三成くんは、大阪に着くまで家康さんの腕の中で気絶しているのだった。

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