悔ゆ

彼は摩訶不思議なる力を手にしていたのか、そうでないのか。

無道の人と事を興したることを

病に爛れた痩身を白布で覆い隠し、その奥に灯した眸は陰と陽が逆しまに彩る。
奇異なる見目に人らは彼を恐れ、そこに禍つ力を見出した。

ひとつ、ふたつ、と謀りを巡らせ、
謡うように不幸を紡ぎ、
軍師らしく占星術を修めていたが、

三年を出でずして

真実まじないに通じていたのかは定かではない。
今更知る術も無いのだから。


しかし――、


彼は間違いなく本物だった。
彼の呪法は玉瑕無く仕上がった。

彼は、

吾此恨を報ぜん

確かに言葉一つで人を殺してみせたのだ。


(慶長七年十月十八日)


狂乱の末の死に様は惨たらしい有様であったと云う

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