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こねた・ぎゃくはーモノガタリ設定
誰も得をしない(周りの人の)胃が痛くなる二人の話

「何故君なんかが豊臣にいるんだ」
「……。俺としては今直ぐにでもここを出奔してもよいのですが」
険しい顔つきをさらに険しく歪めながら彼は唸った。
そんな顔を始終しているから女中や小姓に怖がられているんじゃないのかな。
「その節はもちろん奉公構え(※再就職妨害)させてもらうから。そうしたら乞食にでも身を窶すしかないのかな、ふふふ見物だろうね」
それは少し見てみたいかもしれない。……残念ながら彼が牢人になった途端に小煩い虫どもが自軍へと引き入れようと騒ぎ始めるのだろうけれど。
不思議なことに彼が嬉々として他軍に与する……というのは想像もできない。
彼はより一層顔を険しくする。
「知ってましたが性格悪いですね」
「自覚はしているよ。……っと、話が逸れてしまったね」
「誰のせいだと」
「さあ誰だろう。……そう、正しくは「君が何故豊臣軍に仕えるのか分からない」だ。確かに杉原君は……秀吉と縁があるけれど、だからといってそれがここに留まり続ける理由になるとは思えない」
「……」
「君は何を考えている」
目を眇めて僕とその言葉を睨む彼。
ふ、と不意に息を吐くと目を伏せた。笑みとも呼べる穏やかな顔をしていた。
見慣れぬ表情にはっとさせられる。
「さてね。気紛れの風に吹かれたか、」
「…………」
「若しかしたら……噂の軍師殿が話に聞いたより、もっとずっと人間味が有るのに興味が湧いたのかも知れません」
「気持ち悪いね」
「如何とでも言うがいいですよ」
そう言いながら、穏やかなまま彼は笑みを深めた。
彼の見えているものの中に僕がいるなんて。
それを少し嬉しく思うだなんて……。

「気持ち悪い」

(素直な言葉は持っていない)

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