大坂夏の陣

乾いた銃声が幾重にも響く。
怒号、剣戟、蹄の音が高く鳴る。
追撃しようと馬を駆る伊達隊だが思わぬ足止めを食らった。
退却の殿を務める男はその様子に声を張り上げる。

「今が好機!皆の者!撤収!撤収いたせぇーー!」
「Uhhh,逃げるのかァ…?真田幸村」
「…そう思われても仕方なき由。しかし政宗殿、最後に一言これだけは」
「Hmmm…言ってみな」

「関東勢百万と候へ、男は一人も無く候」

「ンだそりゃァどういう意味だッ!」
「つまり貴殿らは玉無しにて候!」
「っ、ぐ…!舐めた口聞いてくれるじゃねェか…!」
「落ち着いてください政宗様。あまり取り乱されると図星なのかと疑ってしまいますぞ」
「っるせェ!テメェの物言いは一々テメェの親父にそっくりなんだよ片小ォ!!」
「然様でございますか?はは、照れますな」
「ではいざさらばでござるぅぅううぅおぉやかたさっぶぁあああああ」
「褒めてねェーー!ってオイ真田、真田幸村!逃げんな!」


慶長二十年五月六日
大坂夏の陣道明寺の戦いにおいて、真田隊は伊達隊の先鋒を銃撃戦の末に一時的に後退させた。
また同隊は殿軍を務め、追撃を仕掛ける関東勢を撃破しつつ豊臣全軍の撤収を成功させたのであった。

(男は一人も無く)

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