邂逅のその後

路地での邂逅、欠けたリング、
「ふざけんじゃねえドカス。俺は納得してねえぜ」
勅命の書簡。
「XANXUS様、あなたに異存がおありでもこれは九代目の決定です」
チェルベッロ機関。天候を司る守護者たち。
大いなる二枚貝、
「ザンザス」
「……ツナヨシ」
二人の後継者。
そして――――
「戦いがはじまった以上掟で撤回できねーんだ。まあなんだ…二人とも頑張れ!」
この後めちゃくちゃ殴った(家光を)。


「で、だ」
「あ゛?」
現地解散、ホテルに戻っての鮫の第一声はたったの二文字だった。
何コイツ意味分かんねーと睨みつけてやったら鮫もギロリと睨んでくる。
暗殺者の眼力マジ恐ぇ。べべ別にビビッてねえしっ。
「ありゃ一体どういう事なんだよぉボスさんよお!」
脈絡なく言われても困る。
俺は無視して部屋の中で一番豪奢な椅子(持ち込み)に腰掛けた。
と同時にウイスキーをロックで渡される。
さすがルッス、気が利いてるな。だてにオカマしてない。
「ボスさー、あのモドキと知り合いだったの?」
「まあな」
グラスを傾けながらベルに応えてやる。
が。
聞いてきたわりに反応は「ふーん」ってなもんでお兄さんちょっと悲しい。
「う゛お゛おおい!そりゃあ初耳だあぁ」
「グチグチうるせえよテメェに一々言わなきゃなんねえのか、黙ってろドカス。魚類風情が肺呼吸してんじゃねえよ」
「ムム……まさか何か言えない理由があるのかい?」
「あ、いやっ別に秘密にしてたワケじゃねえからっ。わざわざ言う機会がなかっただけだぜ?」
「このっ扱いのっ差っ!!」
傷心中の我が身には鮫の鳴き声は堪えるな。
つか可愛いマーモンとやっかましい鮫じゃ扱い変わるのなんざ当たり前なのではなかろうか。うん。
「…………」
「……。終わりかあ!どこで知り合ったとかいつ知り合ったとか言うべきことがあるだろうがあ゛あああ!!」
「ええー……知りてえか、どおー……しても知りてえのか」
「もったいぶらねえで早く言いやがれえ」
一転して覇気なく疲れたように絞り出された言葉に、困ったものだと心中でそう零す。顔はあくまでもポーカーフェイスを貫いたが。
ううん、どうしたものか。ざくざくといろんな方向から視線が刺さってきて痛い。
『どこで』も『いつ』もついさっきの再会が初対面だ、と言ったところで納得しそうにない状況だ。なんだテメェらそんなに俺に興味津々か。
ええい、こうなったらありのままの姿見せてやる!どーにでもなれ!
けっしていい感じの嘘話を考えるのがめんどうになったとかではない。それに嘘言ったところで墓穴を掘るのが目に見えている。これ以上ない冷静な自己分析だろう。
「実は…………俺は昔あいつの姉で同じ軍に仕える武将で友人だったんだ☆」
まさに『ぽかん』って音がお似合いなくらいに皆固まってやがる。
んだよ……正直に言ってやったってのにそんな反応かよ面白くねえ!
まあ少し、多少、いろいろと、省略してコンパクトにまとめちゃった気はするけどさあ!
誰かなんか言えよオイ!キメ顔までやっちゃったのに恥ずかしいじゃねえか!!
「や、」
「あ゛?」
さすが、なのか一番に動き出したのは鮫。ぎ、ぎ、と油が切れたみたいな動きでこちらを振り返る顔はものすっごい形相をしている。
無意識に体が引けた。が、椅子の上で逃げられない。
「やべえぞお゛おおおおおXANXUSの頭がついにイカれや、ガッ」
「誰がイカれポンチキだ!このスットコ!」
「ん、な……こと……言ってね、え゛……」
手にしたグラスをうっかり投擲。
鈍い音を立ててソレは鮫アーロの頭と衝突した。
べちゃりと無様に倒れ伏すドカスと、それを指さし笑う王子。
抱えられた赤ん坊はナリに似合わない呆れの溜め息を吐く。
それから、
「さっすがボスねん♪相変わらずいいコントロールしてるわ」
「スクアーロ……いい気味だ。ック」
カマが感嘆し、顔面凶器が嘲笑う。
イタリアからついて来たロボがシュコーと音を立てた。
俺が言えたことじゃねえがコイツら協調性ねーな。

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