ジャンク | ナノ
 クリスマスの話



「失恋しちゃったの、私」
「え、そうなんですか」
「好きな人がいたんだけどね、結婚するんだって、その人」
「結婚…。職場の人ですか?」
「うん。この間、会社に行ったらね、あの人の左手の薬指に指輪がはまってて、『結婚することになりました』って言うのよ。ただの片思いだったから、なんにも言う資格なんかないんだけど。やっぱり、ちょっとショックかな…」
「そりゃ、そうですよね…」
「『おめでとうございます、末永くお幸せに』なんて笑顔で言っちゃってさ。そんなこと欠片も思ってないのに、私、バカみたいでしょ…」
「そ、そんなことないですよ!リツカさんはそんなんじゃ…、誰だってそうなりますよ」
「そうかしら…」
「リツカさんは間違ってないです」
「……なんかごめんね、せっかくのクリスマスなのに、私の愚痴ばっかりで」
「いいえ、ぜんぜん大丈夫ですよ。オレ、キリスト教徒じゃないし、彼女いないし。いくらでも愚痴ってください。話してスッキリしちゃいましょうよ」
「森田くん…」
「今日は飲んで忘れましょう。それがいいですって」
「うん、ありがとう…」


***


「そんで?」
「そんでって、何がですか」
「そりゃおめぇ、それからの展開に決まってんだろ」
「ああ。リツカさん、飲みすぎてすっかりつぶれちゃったんで、オレがタクシーで家まで送りました」
「で?」
「で…って…。そのあとオレも普通にタクシーで帰りましたけど」
「美味しくいただいちゃってねぇの?」
「は?いただく?」
「リツカちゃんをだよ!その状況はどう考えても据え膳だろ!」
「いや…オレはそういうのは…」
「はぁー、これだから最近の若者は…」
「失恋話されたんだろ?しかもクリスマスとかこれはもう、そこはお前が体を張って忘れさせてやるとこだろうが」
「まったくだぜ。家まで送っといてなんもしねぇとか、お前ほんとにタマついてんのか?」
「ちょ、ちょっとちょっと!巽さんも安田さんも、頭ん中そればっかりなんですか!?オレは酔ってる女の人を襲う趣味なんてないですから!」
「そりゃあ紳士的なことで」
「男はオオカミでなんぼだろうがよぉ。それなのに森田ときたら草食動物、いいとこヒツジかヤギってとこだな」
「どっちかってとウマじゃね?なんとなくウマ面だし」
「なるほど、ウマか」
「あの、オレ、さすがに怒りますよ」
「森田が怒っても怖くねぇし」
「しっかしなぁ、もったいねぇの。もしかしたらサンタクロースからのクリスマスプレゼントだったかもしれねぇのに」
「プレゼント?」
「そ、童貞卒業のチャ、ン、ス」
「どっ…!オレ!!童貞じゃないです!!」
「ふーん」
「へえー」
「なんなんすか2人して… 」
「お前は今……数百億をドブに捨てた……」
「銀さんぽく言うのやめてください!」




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