ジャンク | ナノ
 クリスマスの話



ピッピッピッロピーロピーロピッピッ

「はい、もしもし」
『おう、リツカ。俺だよ俺』
「赤木さん?どうしたんですか?」
『お前、今どこにいんだ?』
「駅のホームで電車待ってますよ」
『帰るとこか』
「ええ、そうです」
『ちょうどよかった。今、お前んちに向かってるとこだからよ、よろしくな』
「え、よろしくって…」
『今日、チキン食う日なんだろ?』
「はい?」
『チキン。食うんだろ、今日』
「まぁ…クリスマスですからね…。本来は七面鳥ですけど」
『駅前で売ってたんで、買ったからよ』
「え?チキンをですか?」
『ああ』
「チキンってその、こう、手で持って食べる感じのやつですよね」
『いや、なんかトリの形まんまのやつ』
「1羽分!?ローストチキンまるのまま!?」
『うん。うまそうだったから』
「えっと、私と赤木さんの2人だけですよね?2人で食べるんですよね?」
『そうだよ。ま、なんとかなるだろ』
「ええー……なるかなぁ…ほんとに……」
『ああ、そうだ、ケーキも買ったぞ。これも駅前で売ってたから。今日はケーキ食う日でもあるんだろ?』
「え、ケーキ?ちょ、ちょっと待ってくださいよ…、そのケーキっていうのはどういう形状のやつですか…?」
『白くて、上にイチゴが乗ってて、丸くてデカいやつだ』
「はい、ホールケーキですね、うん、なんとなくわかってました」
『好きだろ、ケーキ』
「まぁ、好きですけど……、あぁ、電車きちゃった…。赤木さん、あの、またあとで」
『おう。じゃ、そういうことでよろしくな』


***


「リツカ」
「なんですか」
「飽きた」
「も〜!ほら言わんこっちゃない〜!」
「だってよ、どこ食っても同じ味じゃねぇか」
「当たり前でしょう、どこもチキンなんだから。だいたい赤木さん、まだふた切れくらいしか食べてないじゃないですか」
「俺はコメと漬け物があれば満足だから」
「急に日本人の鏡みたいにならないでくださいよ」
「これ、思ったより油っこいしなぁ」
「そりゃ焼いたお肉ですからね」
「俺も歳だしよ、あんまりこういうもん食べすぎると、あーっと、コレステロール?がどうこうで体によくないってなんかで見たぞ」
「まったく…そういう知識は仕入れてくるんですね…」
「だからほら、リツカが食え。若いんだし、いけるいける」
「ダメです、許しません。まだケーキもあるんですよ。しかもホールで」
「ケーキかぁ。甘いもんはなぁ…」
「赤木さんが買ってきたんでしょ!」
「そりゃそうだけどよ…」
「なんですか」
「…お前が喜ぶと思って、買ってきたんだぜ」
「え?」
「いつも世話になってるから、その礼だよ」
「…そう…だったんですか… 」
「大事な人と過ごす日なんだろ?クリスマスは」
「赤木さん……」
「あと、彼氏のいないリツカのことだから、どうせ何の予定も入ってないと思ってな。こういう日にひとりぼっちは可哀想だからよ、ま、ここはひとつ俺が出張してなぐさめてやろうかと…」
「なっ…!最低っ…!ちょっと感動してたのにっ…!」
「ほら、いくらでもなぐさめてやるぞ。歌でも歌ってやろうか」
「歌なんかいりませんから!私のためを思うならこの余ってるチキン食べちゃってください!」
「いや、そいつは…ちょっと…」
「ケーキもありますからね!」




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