知っているからこそ、今のままがいいからこそ何も変えない。周りの気持ちを知っていて、でも自分の気持ちを優先させたくて俺は線を引いた。
「名字さん、ただいまっす」
「遊馬崎くん、おかえりなさい」
ブルースクウェアを抜ける少し前に俺たちの居場所の中で空いたスペースがあった。その場所はダラーズに入った少し後に別の人に埋められた。そこは貴方が居る場所じゃなくてあの人が居る場所なんっすよ、そう何度俺は思っただろう。
「ワゴンん中入らないんっすか」
「先どうぞ」
ここまで執着してしまう理由はあの人に似ていると云うこと。だからそこまで居心地が悪くないのかもしれないし、埋めてほしくはなかった。
「荷物いっぱいでしょ」
「すみません」
でも俺はまだあの人が好きだから、彼女を重ねてしまうからただ入れないように線を引くしかできなかった。それでも時々彼女をこちらに入れてしまいそうで、入ってきそうで怖かった。
「…遊馬崎くん、」
「なんっすか?」
どうしたらいいかわからないのが本音である、自分では動きようがない。でも彼女には動いてほしくない、だって俺はまだ忘れたくはないから。いつか帰ってくるんじゃないかと信じていたかったから。
「元気ないね」
「大丈夫っすよ」
でもいつか待ってる間に彼女を受け入れてしまってあの人を忘れてしまいそうな自分が怖くて、何も出来ない。だから引いた線が消えないように願うことしかできない
白線より外側を切望する
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