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「あの、これからよろしく…な…」
す、と、鷺沼が、親愛の為か手を差し出す。何故だかその瞬間、ドキリ、っと胸が大きく跳ね、顔が赤らんだ。
「触るな…!」
自分の感情に、戸惑い、つい、差し出された手を叩く。
鷺沼は途端、むっと顔を顰め、
「そうかよ…」というと、そのまま亮を伴い、どこかへ行ってしまった。
「あ…」
取り残された、龍也。
残されたのは、一人さびしい孤独と、後悔だった。
物わかりのいい子供の龍也だったのに…、そのときばかりは、泣きそうになった。
鷺沼においていかれて。鷺沼に背を向けられて。
今でも、ふとした瞬間にあの日の出来事が龍也の胸を痛める。
最初のあの出会いがなければ…。
自分は、亮のように、鷺沼に甘えられていたんじゃないか…と…。
*
「やっほー、久しぶりだねぇ、龍」
「りょう…」
大学帰り。近くのマックで、たまたまお茶をしていたらしい亮に声をかけられた。
亮の傍らには、可愛らしい女の子がちょこん、と椅子に座っている。
亮は席をたち、龍に近寄ってきた。
「どったの?浮かない顔して…。あ、また猛兄関係?」
「いや…、」
「二人ってほんと、仲悪いよな。俺、猛兄も龍も好きだから、さ。なんか複雑」
いいながら、肩を竦める亮。釣られて、龍也も肩を竦めてしまった。
亮は、二人が昔から仲が悪いものだと思っているし、いがみ合っていると思い込んでいる。
龍也の方は、まったく別の思いを抱いているのに…。
本当は、鷺沼を僻んだり、嫌悪したりはしていない。
その逆だ。
「彼女…、いいのか?」
「あ、いけね…、今日は久しぶりのデートなんだ。またな、龍」
手を振りながら、また彼女の元へ行く亮。
もしも、彼女と、亮が別れたら…
そしたら鷺沼は亮を慰めるんだろうか。
そしたら、亮を抱くんだろうか…。
もやもやとした黒い感情が、胸に湧き出る。
龍也は涼しい顔をしながら、それを押し込めて、帰路を急いだ。
す、と、鷺沼が、親愛の為か手を差し出す。何故だかその瞬間、ドキリ、っと胸が大きく跳ね、顔が赤らんだ。
「触るな…!」
自分の感情に、戸惑い、つい、差し出された手を叩く。
鷺沼は途端、むっと顔を顰め、
「そうかよ…」というと、そのまま亮を伴い、どこかへ行ってしまった。
「あ…」
取り残された、龍也。
残されたのは、一人さびしい孤独と、後悔だった。
物わかりのいい子供の龍也だったのに…、そのときばかりは、泣きそうになった。
鷺沼においていかれて。鷺沼に背を向けられて。
今でも、ふとした瞬間にあの日の出来事が龍也の胸を痛める。
最初のあの出会いがなければ…。
自分は、亮のように、鷺沼に甘えられていたんじゃないか…と…。
*
「やっほー、久しぶりだねぇ、龍」
「りょう…」
大学帰り。近くのマックで、たまたまお茶をしていたらしい亮に声をかけられた。
亮の傍らには、可愛らしい女の子がちょこん、と椅子に座っている。
亮は席をたち、龍に近寄ってきた。
「どったの?浮かない顔して…。あ、また猛兄関係?」
「いや…、」
「二人ってほんと、仲悪いよな。俺、猛兄も龍も好きだから、さ。なんか複雑」
いいながら、肩を竦める亮。釣られて、龍也も肩を竦めてしまった。
亮は、二人が昔から仲が悪いものだと思っているし、いがみ合っていると思い込んでいる。
龍也の方は、まったく別の思いを抱いているのに…。
本当は、鷺沼を僻んだり、嫌悪したりはしていない。
その逆だ。
「彼女…、いいのか?」
「あ、いけね…、今日は久しぶりのデートなんだ。またな、龍」
手を振りながら、また彼女の元へ行く亮。
もしも、彼女と、亮が別れたら…
そしたら鷺沼は亮を慰めるんだろうか。
そしたら、亮を抱くんだろうか…。
もやもやとした黒い感情が、胸に湧き出る。
龍也は涼しい顔をしながら、それを押し込めて、帰路を急いだ。