決別
ミムラさんとの不思議な、繋がり。
僕は、一度ミムラさんにメールアドレスも聞いたのですが、上手く送れず…ミムラさんも僕のメールアドレスを教えたのですがこれまたうまく送信できず。
僕らはメル友にはなれず、ずっと電話での付き合いをしていました。
専ら、電話は、ミムラさんから。
本当は電話代がもったいないと思い、僕からもかけているのですが、生憎、いつもミムラさんの電話番号にかけても繋がらないのです。なぜでしょう。
電波の問題なのでしょうか。
ミムラさんは子供が電話代なんて気にするな…なんて笑ってくれましたが…
ミムラさんにはほんと、申し訳なさでいっぱいです。
あの日、ミムラさんが電話をくれなかったら…僕はどうなっていたでしょうか…。
あまり考えたくはありません。僕は本当にいつか死んでいたかもしれないから。
ミムラさんがいてくれて、朔夜君のことを考える時間が少し減りました。
朔夜君がまだ好きなのに。
朔夜君を思い出すたびに傷つくだけの心は、少し余裕ができたように思います。
ミムラさんとの時間は、僕の中で、大切なもの へと変わっていきました。
ミムラさんは僕の精神安定剤みたいな人です。
こうして、ミムラさんとずっと付き合っていけば…朔夜君を忘れられるでしょうか。
あんなに好きでいた朔夜君を…。
図書室でミムラさんのことを考え込んでいた僕の視線に、影が落ちました。
ん?と不振に思い顔をあげた瞬間、影の主を見て固まりました。
「…あ…、」
「…先輩、」
「朔夜…くん…」
朔夜君…。
避けていた朔夜君が…僕に話しかけています…。
久しぶりに間近で見る、朔夜君の顔。
その顔に泣きそうになります。
「今、いいですか…?」
「僕…」
「時間は取らせませんから」
そういって、彼は僕の腕を掴みました。
どこかいらいらとした、有無を言わせない様子。
その様子に、少しびくびくしながら、僕は大人しく彼の後を追いました。
連れられたのは、使われていない空き教室でした。
彼は僕を中へ入れると、じっと、無言で僕を見つめました。
「…朔夜君…?」
「俺、今付き合っている人がいます…」
静かに、切り出された言葉。突然の言葉に僕は呆然と目を見開きます。
彼が誰かと付き合いはじめたことは噂で聞きました。僕を抱いた不良も、朔夜くんがほかの誰かと付き合ったと僕に行っていたのです。
だけど、朔夜くんの口から改めて聞かされると・・・、ショックで何も言えません。
「え…、」
「あいつが、付き合ってっていうから…。俺まだ先輩の事好きです。
でも、正直わからないんです…あいつの言葉を信じればいいのか、先輩の言葉を信じればいいのか…」
朔夜君は、真剣な顔で僕を見据えて、
「だから、言ってください。本当の、こと。先輩は、俺の事好きですか?俺ばかりがもしかして舞い上がってました?」
「そんな、こと…」
「じゃあ、なんで他の人に抱かれたんですか…。なんで…っ」
感情をむき出して、履き捨てる朔夜君。それはいつもの優しい朔夜くんの姿ではありませんでした。僕のせいです。
なんで…。
なんでこうなったのか…なんて、僕にもわからない。
『お前が悪いんだぜ?学校の超有名人のあいつと付き合うから。変な恨み買っちまったんだからな』
そもそも、僕が、こんな僕が朔夜君と付き合ったからいけないんでしょうか…。
僕が、何も持たない弱い僕だったから。
だから、朔夜君にも助けを求められなかった。
信じてもらえなかった。
何も言えず俯く僕。彼はしばらく、僕の言葉を待っていたようだけど、僕が何も言えないとわかると、ふ、と一瞬寂しげな顔をし、僕の身体から離れていきました。
「朔夜君…」
「俺は、俺だけの人がいいから…」
「え…」
「俺…まだあいつが好きかわからないけど、先輩の事、諦めます…。心が狭い男でごめんなさい。でも、俺、先輩を疑ったまま、付き合っていたくないから…。ごめんなさい。今までありがとうございました」
続く言葉を出来るなら聞きたくなかったのに。
「さよなら」
そういって、彼は僕の方を見ずに去っていきました。
今度こそ、彼との決別、でした。
僕は、一度ミムラさんにメールアドレスも聞いたのですが、上手く送れず…ミムラさんも僕のメールアドレスを教えたのですがこれまたうまく送信できず。
僕らはメル友にはなれず、ずっと電話での付き合いをしていました。
専ら、電話は、ミムラさんから。
本当は電話代がもったいないと思い、僕からもかけているのですが、生憎、いつもミムラさんの電話番号にかけても繋がらないのです。なぜでしょう。
電波の問題なのでしょうか。
ミムラさんは子供が電話代なんて気にするな…なんて笑ってくれましたが…
ミムラさんにはほんと、申し訳なさでいっぱいです。
あの日、ミムラさんが電話をくれなかったら…僕はどうなっていたでしょうか…。
あまり考えたくはありません。僕は本当にいつか死んでいたかもしれないから。
ミムラさんがいてくれて、朔夜君のことを考える時間が少し減りました。
朔夜君がまだ好きなのに。
朔夜君を思い出すたびに傷つくだけの心は、少し余裕ができたように思います。
ミムラさんとの時間は、僕の中で、大切なもの へと変わっていきました。
ミムラさんは僕の精神安定剤みたいな人です。
こうして、ミムラさんとずっと付き合っていけば…朔夜君を忘れられるでしょうか。
あんなに好きでいた朔夜君を…。
図書室でミムラさんのことを考え込んでいた僕の視線に、影が落ちました。
ん?と不振に思い顔をあげた瞬間、影の主を見て固まりました。
「…あ…、」
「…先輩、」
「朔夜…くん…」
朔夜君…。
避けていた朔夜君が…僕に話しかけています…。
久しぶりに間近で見る、朔夜君の顔。
その顔に泣きそうになります。
「今、いいですか…?」
「僕…」
「時間は取らせませんから」
そういって、彼は僕の腕を掴みました。
どこかいらいらとした、有無を言わせない様子。
その様子に、少しびくびくしながら、僕は大人しく彼の後を追いました。
連れられたのは、使われていない空き教室でした。
彼は僕を中へ入れると、じっと、無言で僕を見つめました。
「…朔夜君…?」
「俺、今付き合っている人がいます…」
静かに、切り出された言葉。突然の言葉に僕は呆然と目を見開きます。
彼が誰かと付き合いはじめたことは噂で聞きました。僕を抱いた不良も、朔夜くんがほかの誰かと付き合ったと僕に行っていたのです。
だけど、朔夜くんの口から改めて聞かされると・・・、ショックで何も言えません。
「え…、」
「あいつが、付き合ってっていうから…。俺まだ先輩の事好きです。
でも、正直わからないんです…あいつの言葉を信じればいいのか、先輩の言葉を信じればいいのか…」
朔夜君は、真剣な顔で僕を見据えて、
「だから、言ってください。本当の、こと。先輩は、俺の事好きですか?俺ばかりがもしかして舞い上がってました?」
「そんな、こと…」
「じゃあ、なんで他の人に抱かれたんですか…。なんで…っ」
感情をむき出して、履き捨てる朔夜君。それはいつもの優しい朔夜くんの姿ではありませんでした。僕のせいです。
なんで…。
なんでこうなったのか…なんて、僕にもわからない。
『お前が悪いんだぜ?学校の超有名人のあいつと付き合うから。変な恨み買っちまったんだからな』
そもそも、僕が、こんな僕が朔夜君と付き合ったからいけないんでしょうか…。
僕が、何も持たない弱い僕だったから。
だから、朔夜君にも助けを求められなかった。
信じてもらえなかった。
何も言えず俯く僕。彼はしばらく、僕の言葉を待っていたようだけど、僕が何も言えないとわかると、ふ、と一瞬寂しげな顔をし、僕の身体から離れていきました。
「朔夜君…」
「俺は、俺だけの人がいいから…」
「え…」
「俺…まだあいつが好きかわからないけど、先輩の事、諦めます…。心が狭い男でごめんなさい。でも、俺、先輩を疑ったまま、付き合っていたくないから…。ごめんなさい。今までありがとうございました」
続く言葉を出来るなら聞きたくなかったのに。
「さよなら」
そういって、彼は僕の方を見ずに去っていきました。
今度こそ、彼との決別、でした。