短編 | ナノ

「アリー様…」

捨てられた子犬のような瞳をしている、アリー様の頬を両手でくるむ。

アリー様のかおを覗けば、アリー様は縋るようにボクを見ていた。

嫌わないで。

そう言っているようでもあった。


「アリー様…、ボクは貴方が男でも、構いませんよ…」

男だって、なんだっていい。


「貴方が男でも両性でも。ボクはただ、貴方が貴方ならば…、貴方がボクのそばにいて下さるだけでいいのです…」
「えっ…」
「貴方は、私に初めて求めて下さった方だから…」

助けて、助けて、とアリー様は会った時、ボクに助けを求めた。
初めてアリー様はボクを求めてくれた人、なのだ。
ボク自身を慕いそばにいてくれる人なのだ。


アイシテル。こんなにも、愛してしまっている。
男でも、女でも。そんなのは関係ない。

胸に抱いたこの小さな人魚を愛しているのだ。


「アリー様・・・、」

アリー様、
貴方が好きです

貴方を愛しています。

伝えられたら、いいのに…


「アリー様はアリー様のままでいて下さい…
少なくとも、ボクの前では。ボクは貴方から離れませんから…。絶対に」
「兄様…」

アリー様は感極まって、泣きじゃくる。
よほど今まで我慢されていたのだろう。

アリー様はありがとうありがとうと言いつづけた。

「兄様だけです…こんな…秘密を話してしまったのは…」

恥ずかしそうに頬を朱に染めて、言う、アリー様。

嗚呼なんて愛らしい。

それに、ボクだけ、なんて。

その言葉に酔ってしまう。

ボクは自分の欲求をなんとか抑え、胸にアリー様を抱き、「ボクだけは貴方の味方です」と呟いた。


ボクだけ

ボクだけは貴方を愛してアゲル

ボクだけは…


だから…

だから…どうか…


どうか…貴方も…


ボクヲ、

愛シテ……



愛してほしい
愛してくれ…

願いながら、アリー様と接する。

祈るように、いつか、この気持ちが通じますように…と。




「兄様…私…」

「恋をしてしまいました…」

「人間の…王子様に…」


残酷な言葉はある日突然告げられた。

気恥ずかしそうにボクに告げるアリー様。



「私…あの方を愛してしまったのかも知れません…」

貴方は、呆気なく、ボクを絶望にたたきのめした。
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