作品 | ナノ
最近、彼が冷たい気がする。何となくだけど、避けられている。気付いてないと思っているのだろうが、バレバレだ。彼のことを思い大袈裟に溜め息を吐けば、目の前の男は「どうした?」と心配そうな顔をした。


「…何でもない。」
「何でもないのに溜め息なんか吐くわけないだろ。」


俺に言えないことでもあるのか?と言わんばかりに詰め寄る新開に「乙女の悩みだから気にしないで」と誤魔化したがそこで引くような素直なやつではない。聞くまで帰さないぜ、と言わんばかりに私の腕を引っ張った。


「まさか…俺のこと、とか?」
「まぁ、半分当たり。」


…なーんて嘘に決まってるじゃん。
心の中で付け加えたけど口には出さない。だって新開って、めんどくさいもの。



いつからだっけ、新開がめんどくさいと思い始めたのは。あれ、思えばなんで新開とこんな仲になっちゃったんだろう。思い出せないくらい昔ではないのに、ナゼかきっかけが思い出せない。気付けば新開と定期的にセックスしていた。しかし私にはちゃんと彼氏がいる、勿論それは新開じゃない。新開だって、隣のクラスのユミちゃんと付き合うらしい。みたいな噂は流れている。ユミちゃんに対しても、私の彼氏に対してもあまり宜しくない今の関係に、そろそろピリオドを打ちたい。


わたしの答えが予想外だったのか、目をパチクリさせ「え、俺?」とさっきよりも詰め寄る彼に舌打ちしてやりたかった。やっぱり新開ってメンドクサイ、冗談も通じない男なのかこいつは。真に受けるくらいなら言わなきゃ良かった。


「はは、おめさんを悩ますことなんてしてねーけどな」
「ああ、うん。無自覚なんだね。」


私の台詞に新開は不思議そうな顔をする。まあ、分からなくて当然なんだけど。だって新開のことじゃないもん。


「参ったな。全く身に覚えがないんだが…俺、なんかしたか?」


したなら謝る、とウザさが倍にも増した新開に「ウソウソ、ジョーダンだよ」と笑って返した。そっか、と悲しそうに笑う新開に心臓がドキリとした。そんな表情は初めて見る、もしかして傷付けてしまったのだろうか。と思慮していたが、少し間が空けばまたいつものようにヘラリと笑う新開に安心した。


「おめさんも酷い女だな」
「どうして?」
「俺が好きなのを知ってるくせに」


ふふ、と曖昧に笑って返せばそんなワタシの態度が気に入らないのか、また数時間前のように組み敷かれた。


「なぁ、」
「んー?」
「真波とは上手くいってるか?」


新開の言葉に私は酷く動揺した。山岳と付き合っていることは誰にも言っていない。彼も言いたがるタイプではないから、他の人にバレることなど有り得ないのに。なぜそれを、新開が。


「何で知ってるかって?」
「…。」
「おめさんのことなら何でも知ってるさ」
「新開、」
「この前部室でキスしてたことも、付き合って1ヶ月経つこともな」
「なんで…」


それを知ってるの、と言いたかったが最後まで言葉にできなかった。新開が今にも泣きそうだったから。やっぱりもう辞めよう、新開も山岳とのことを知っているなら諦めてくれる。ごめん、と言えば彼は首を横に振った。


「あのさ新開、もう」
「真波に言ったの、俺なんだ」
「………は?」


頭に血が昇るというよりも、全身から力が抜けて何も考えたくなかった。新開が、山岳に言った?なにを?これを?この関係を?それとも新開が私を好いていることを?それじゃあ山岳は、とここまで考えたところで彼は口を開いた。


「ジョーダンだよ」


それはもう素敵な笑顔で言うのだから、この関係を辞めようなんて言えるわけもなかった。


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