作品 | ナノ
あのことわたし

「お前、まだ新開と付き合ってんのォ?」

「付き合ってるよ」

「なんで、あんな奴」

「荒北とこうしているだけで、おあいこ様でしょ?」

「確かにネ」

荒北の家でそういうことして、ベッドに寝転がったままお互いスマホを弄りながらのピロートーク。
ムードもクソもないこの感じが心地いい。
新開は、荒北の友達で私の彼氏。
現在二股中。お盛んだ。

「ねぇ、荒北。私の何がダメだったんだろう。やっぱ女子力?」

「知らねェよ。アレじゃなァい?食欲」

「ぐっ…!否定できぬことを!やっぱり、少食女子の方がいいのかな?」

「俺ァ気にしたことねぇけど。つーか、俺じゃなくて本人に聞けばァ?」

ごもっともだ。
最初は私が彼女だったはずなのに、いつからかあの子が彼女で私が浮気相手。
知らないと思ってるから、さらに笑える。
腹いせに荒北と関係を持った。
だけど、勘のいい荒北は全て気づいた上で私と関係を続けている。

「私、荒北を好きになればよかった。今からでも間に合うかな」

「…思ってもねぇこと言うなヨ。名前チャン、そゆとこ残酷だよネ」

そう言って、返事をする前に唇に噛みつかれる。

彼は知らない。
あの子は荒北の恋人だということを。
あの子は知らない。
荒北にとって、あの子は暇つぶしだということを。
荒北は知らない。
私が、荒北の気持ちに気づいているということを。

みんな知らない、私が全てをわかっていることを。

なにも知らないあの子。
全てを知っている私。

どっちが幸せなのかなぁ。


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