作品 | ナノ
※社会人新開×JK



「……明日必要な資料の準備が終わらなくてな。……夕飯は大丈夫。……あぁ、泊まりになるかもしれないから、先に寝ててくれ」

少し離れたところで新開さんの電話をしている声が聞こえる。奥さんに電話しているらしい。ソファに踞る私の方はすることもないので、煙草を吸いながらアダルトビデオを音量を下げて見ていた。女子高生が教室で先生にレイプされている。女子高生役のAV女優の実年齢は大体において知らない方が幸せなことが多いから、AV女優の年齢については考えないでおく。

「女の子が見るもんじゃないぜ、そんなもん」

電話を終えた新開さんがテーブルの上に携帯を置いてから、代わりに煙草を手に取る。

「暇なんだもの。だって、新開さん、今から明日必要な資料作るんでしょ?」

口の端を片方だけ上げる笑い方で新開さんを見上げれば、彼もつられて笑っていた。

「有能な部下のお陰で片付いたよ。だから、こうしてホテルに居れる」

そう言って頭をぐしゃりと撫でてくれた。新開さんの大きな手が好き。髪の毛が乱れたけど、どうせ今から乱れるのだ。
アダルトビデオの方から微かに声が聞こえて、どうやらそろそろ終わりのようだ。

「ねぇ、新開さん、賭けません?」
「何?」
「これ。顔射か中出しか。負けた方がホテル代、持つってことで」
「ホテル代って……そのくらい、俺出すつもりだけど?」
「いいから。私、中出し」
「女の子が下品だな」
「じゃあ、新開さんは顔射ね」
「俺に選択権はないのか」

新開さんは少し困ったように笑った。ちょうどその時に、AV女優の大きな胸にどろりと白い精液が掛かったから、私は画面から顔を背けた。

「うぇえ…」
「引き分けだな。まぁ、それが女の子らしい反応だけど。─────今から同じものを見るのに、それで大丈夫かい?」

耳元で囁いた新開さんの声は、笑っていたけどどこかサディスティックだった。ぞわりと震えたのは多分歓喜だろう。





怠惰。
優しそうな顔をして、私を攻め立てるときの新開さんの鬼みたいな表情は、初めて抱かれたときからどうしても慣れない。水の入ったペットボトルに手を伸ばす新開さんの白い脇腹を見つめていたら、私の視線に気付いた彼と目が合った。

「さっき終わったばかりなのに、まだしたいのか?強欲だな、おめさんは」
「…違います」
「嘘が下手」
「だから、………もういいです」

ベッドから起き上がれば誤解も解ける。それ以外のその他諸々も全部終わり。新開さんの笑う声が背中で聞こえた。全部分かってるんだ、何を言えば私がベッドから出ていくかを。体がだるい。




蛇口を捻ってお湯の温度を確かめてから湯船に入浴剤を入れた。ローズの匂い。

「遅かったか」

煙草を銜えた新開さんが戸口に立っていた。

「また変な入浴剤入れたんだろ」
「ローズです」
「………甘い匂いがする…」

気だるそうな新開さんの眉間の皺が深くなって、何だかひどく優越感を覚える。新開さんに対して嫌がらせを出来ることは滅多にない。体を洗い終わった私は一足先に湯船に浸かった。多分彼もすぐに入るのだろう。それまで広々とした湯船に足を伸ばす。
体を洗う新開さんの腕、首筋、肋、脚。全部が男っぽくて、なんだか見とれてしまう。学生時代は自転車競技に励んでいたという、そのときの名残というにはあまりに立派な腹筋が筋を作って浮いていた。

「もう少し、こっちにおいで」
「ん」

湯船に新開さんを招き入れたら少しだけお湯が溢れた。私の隣で、新開さんは窮屈そうに脚を抱いて座っていた。
前髪が湿気で目に掛かっている。濡れた首筋に髪が張り付いている。甘い匂い。滴の浮かぶ首筋が、とても甘そうに見える。噛みつきたい。

「ねぇ、はやと…さ、ん」

めったに口にしない名前を呼んで、新開さんの細い首に腕を回して首筋を舐めた。筋、骨、熱を持った肌、全部を食い尽くしたくて仕方がない。少しだけ歯を立てたときに新開さんの溜め息。

「本当に聞き分けの悪い子だね、おめさんは」

痕を付けたい。自分のものにしたい。
そう思わせるのは全部、あなたのせいだ。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -