作品 | ナノ
浮気のボーダーラインって、どこからだと思う?
彼氏に聞くと、気持ちが浮ついたらじゃない?と返って来た。
隼人に聞くと、相手に申し訳ないと思わなくなったらじゃねぇ?と返って来た。
正解ってあるのかな。

「おめさんはどう思う?」

あーと、彼の腕の中で考える。
チャリ部で鍛えた彼の腕は、私の貧弱な体にはちょっとごつごつと硬かった。
そこがいいんだけど。

『そもそも浮気したことないしな』
「えっ」
『え?』

少し驚いたのか体を浮かせた。
いつも飄々としているから、その反応が可愛くて鼻にキスしてやる。

『なに?どうかした?』
「俺とはなんなの?浮気じゃないの」
『なんで?まぁ隼人は浮気なんだろうけど』

そう言うと、少しむっとした様子で眉を潜めた。
その厚い唇に、啄むようにまたキスを落とす。
あ、バナナ味のパワーバー食べてたな、味が残っている。
私バナナ苦手なのに。
隼人には一つ年下に可愛い可愛い彼女がいる。
目に入れても痛くないだろうなってくらい可愛がっていて、荒北も東堂もよく冷やかしている。
私には一つ年上の彼氏がいる。
もう大学生だからたまにしか会えないけど、大人な人で尊敬もしている。お互いに漠然と、このまま結婚するんだろうなとは思っている程だ。

「おめさんだって、浮気だろ」
『私は最初から気持ちが浮ついてなんかいないし、彼氏に対しても隼人に対しても申し訳ないと思った事なんて一度もないよ』

だって、両方本命だし。
だけど隼人は面白くないみたい。

「最低な奴。本当性格悪ィな」
『それでも相手してくれる隼人はとっても優しいね』

今度は噛み付くようなキスをする。
暫くしているとその気になってくれて、私のキスに応えてくれた。
隼人は私を可哀想だといつも言う。
可哀想、可哀想、可愛い、可哀想。
その繰り返しでいつも私を荒々しく抱くのだ。
そうそう、その調子。
優しいのは、彼女にだけ与えていればいい。
可哀想、可哀想と言う隼人に私はいつも大好きだよとだけ返事をする。
隼人の事、心から大好きだよ。
愛しているのは、別の人だけど。





名前に嘘を吐き続けている。
俺と彼女は、既に別れているのだ。
それでも未だにそういう風に見えるのは、元カノが俺の側を離れないからで、元々甘え上手な子だったので一度情が移ってしまうと無下に冷たくも出来ずにいるから。
靖友や尽八はいい加減にしろといつも言うけれど俺はどうしたらいいか分からない。
元カノに対しては一切恋心はない。
今の俺には名前だけだ。
だから、俺は浮気じゃない。
彼女からの大好きが欲しくて、俺は可哀想だと言い続けるのだ。
早く俺が彼女の一番になればいいのに。
そしたらこんな風に愛してもらえないのだろうか。

「名前」
『んー?』

ずっと名前の側にいたい。だから彼氏と別れて、俺を選んで。
そう言えたらとても楽なのに。
彼女はまるで兎のようだ。
年中発情期で、酷く寂しがり屋で。
享楽的な、ダメ女。

「おめさんは本当に可哀想だな」
『知ってるってー』

ハハハと楽しげに笑う声さえ愛おしい。
彼女から愛していると聞けるのはいつだろうか。
そんな日が、いつか来るのだろうか。
青い春が待ち遠しい。


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