41
 夕暮れ、セツは大急ぎで階段を駆け下りていた。
 今日も今日とて美しい夕日が目の前の湖に沈み掛けている。その美しさに、思わず目を細めて見入ってしまう。
「ああ、セツさん」
 ぼんやりと夕日を見つめていると、階下から涼やかな声がした。
 我に返ってそちらを見ると、そこには湖に沈む夕日と同じ橙色をした目の美人ーーレイールが至極嬉しそうに手を振っていた。
 待たせてしまったことに罪悪感を抱きながら、セツは残った階段を勢いよく駆け下りる。
「ごめん、待たせちゃったね」
「いいえ。そんなことはありません」
「そっか、なら良かった。じゃ、臭い落としてくるからもうちょっと待ってて」
 あれからセツとレイールはほぼ毎日のようにセツの寝床である、この灯台の下で会っていた。
 会う度にレイールは良い匂いのする石鹸を持ってきてくれた。おかげで異臭の問題はかなり緩和された。もう、ケミに貰った一つの石鹸をケチって使わねばならない心配が無くなったからだ。
 思う存分体を洗うことが出来たセツは川辺に備えていた服を身につけてレイールの元へ向かう。彼女はいつも小屋の裏手でこちらに背を向けて待っていてくれる。
「お待たせ。そういや、何でいつもこんな狭っこい所で待っているの? 川辺の方が景色良いのに」
「い、いえ。私は、その……。良いんです。ここで」
「?」
「それより、お茶にしませんか? 今日は良い茶葉を用意したんですよ」
 どこに隠していたのか、レイールは急にバスケットを取り出してティーセットをセツお手製のちゃぶ台に並べる。
 そしてポットを布で包んで茶葉を蒸らしながら、目の前に次々と茶菓子を並べていく。その手際の良さと、どこか鬼気迫る雰囲気に圧倒され、先の疑問を尋ねようとする思いは押し退けられる。
 あれよあれよと思う間にレイールは一度暖めたカップに琥珀色の紅茶を注いでゆく。
「あ、美味しい。変わった臭いだけど」
「良かった。これはローズヒップと言って、肌にとてもいい紅茶なんですよ。先日用意したジャスミンと同じく、香りで敬遠されがちですけど……」
 あれは確かに臭かった。芳香剤のようだった。と喉まで出るものの、そんなことを口にすればレイールが悲しむのは目に見えているのでぐっと堪える。言わずとも涙目なのだ。言えるわけがない。
 ひとしきり菓子と紅茶を詰め込んだセツはレイールの紅茶談義を適度に受け流し、毎度恒例の話を口にした。
「ね、前の続き話してよ」
「はい。確か前回は魔物がこの世に登場した所までお話ししましたね」
「うん。現状で満足して、成長を止めた人間が魔物へ退化する話」
「そうです。ヘネラル伝説ではそう語られています。進化することを忘れ、現状に満足してただ先代の栄光に寄りすがって生きる人。その怠惰の心から魔が生まれ出、いつしかそれがその人自身を飲み込んだ……。これが一般的な魔物の誕生ですね」
 あれから、セツはレイールに自分達が魔物として登場する「ヘネラル伝説」を教えて貰っていた。
 なんでもその神話は誰もが幼少期に絵本で読むほど有名なものらしい。それ故昔から神話に慣れ親しんでいたレイールの説明は非常にわかりやすかった。
 最も、一般の人々に「諸悪の根元」として憎まれる魔物が自分であるセツからしては、非常に複雑な心境なのだが。
「初めに生まれたのは、赤い目をした魔物だったそうです。それは何でも破壊する力を秘めていたそうで、後々全ての魔物を束ねる存在になったとか。ああ、そういえば、その魔物達は今の魔物と違い獣によく似た姿をしていたそうですよ。俗に言う先祖返りですね」
「赤い目ねぇ……」
「そして赤目の魔物は次に生まれた白の魔物を従え、沢山の国、町、集落を襲いました。襲われた町々は死者と新たな魔物で溢れかえり、その様相は正にこの世の地獄だったそうです」
「白か。うーん……」
「それからも紅色、橙、金色等の普通の魔物とは違う、強力な魔物が次々に誕生し、更に沢山の血が流れました。ちなみに、そのような特別な魔物はシキと言われています。恐らく、色彩と死期を兼ねたのでしょう。そして最後に黒の魔物が生まれます。それは他の魔物とは比にならない程凶暴。ただ、行動には謎な点が多かったそうです」
 黒の魔物。
 間違いなく自分だ。そう思ったセツは詳細を尋ねる。
「そうですね。いきなり一集落を壊滅させたかと思えば、他のシキに襲いかかって死に至らしめたり、後にシキを封じた賢者の側に着いたり。かと思えば賢者を死に至らしめたり。とにかく行動に一貫性がないんです」
「最悪だな、そいつ」
 思わず、本音が漏れた。
「え、賢者を死に至らしめた? やっぱりか……」
 つい嫌な点だけに目が行っていたセツはうっかり聞き流しかけていた内容について聞き返す。
「そうです。その前にコメンサール聖戦、人間とシキの最終戦争についてお話ししますね。コメンサール聖戦はシキの侵略に怯える中立ち上がった、一人の賢者が起こした聖戦です。賢者は魔物の討伐の方法を心得ていました。彼の指導の元、人々は立ち上がり、魔物へ、シキへ反旗を翻します」
 脳裏に懐かしい光景が蘇る。
 小高い丘、目下に広がる大勢の武装した人々。
 その中央に立つ、真っ白なローブを頭から被った人物。
 それを見た途端、血が疼く。体は、本能は覚えていた。あれが人間に持て囃されている賢者、そして自分達を生み出したアルティフだと。
 魔物である自分達を生み出した彼は、魔物達を容易く殺める技術を熟知していた。
 新たな命を生みだし、神を気取っていた彼は、今度は突如現れた異形の生物を滅する者として、救世主として歴史に名を刻もうとしていたのだ。
「賢者は魔物を討伐するために天より新たな命を生み出しました。それが後にサイと呼ばれる天使群です。一説では黒の魔物はサイが堕落したものだとも言われています」
「サイなんて居たっけ?」
 アルティフの周りにいた、やけに白っぽい体で灰色の体をした軟体生物のような気色の悪い生き物。そう言えば、あれがサイだった。仲間内ではナメクジと呼んでいたため、その名に懐かしさは全く感じられない。
 外観、色、感触、臭い。どうもナメクジと共通点が多すぎるのだ。
「劣勢だった賢者達はサイの活躍に、シキの内部分裂によって優勢になり、やがてシキ達を最終決戦の場であるメギドの丘へと追いつめます。その時点でシキの数は僅か七頭にまで減っていたそうです。そして弱ったシキ達を追いつめ、止めを刺そうとした瞬間……。あの黒の魔物が何処からともなく現れ、賢者の心臓を抜き取ったのです。しかし、賢者も最後の力を出し、魔物の心臓を突きました。そして黒の魔物の命を生け贄として、シキ達をメギドの丘諸共封じ込めたのです」
「……ちょっと泊着いているね」
 本当は心臓を抜き取ったのではなく、正面から差し違えたのだ。
 心なしか野蛮に伝えられている事実に、何となく腹が立った。
「賢者、そして黒の魔物が息絶える瞬間、生き残ったサイが賢者の亡骸を抱き、この世から切り離されるメギドの丘から脱出しました。黒の魔物の爪が刺さったままの賢者は、朝日が照らす小高い丘に寝かされ、そして多くの者に見守られながら最期にこう呟きました。「古き約束が守られる限り、私は何度でも戻って来よう」と……」
 三日に渡って語られた、ベルデダロ神話。
 それは自己犠牲と勧善懲悪が混ざっている、謂わばどこにでもあるポピュラーな物語。
 だが、セツは納得がいかなかった。
 何故ならば、彼女は知っているのだ。これが自分達の過去を綴っていることを。そしてその物語が、一部都合の良いように変えられているということを。
 けれど、記憶が欠けているセツは「改変されている」ということが分かっても、どこがどう変えられているのかというところまでは思い出せない。
「賢者って、今も皆慕っているの?」
「……はい。私も、慕っています。彼は魔物の、シキ達の魔の手から私たち人類を救ってくださった方ですから。謂わば、神のようなものでしょうか。事実、各地に賢者を祀る施設があるそうです」
「あるそうって、レイールは実際に見たことはないの?」
「はい、お恥ずかしながら私はつい最近まで母と住んでいた塔から出たことがありませんので。それに……」
 何故か言葉を詰まらせ、そして直後に「世間知らずなので」と照れ笑いを浮かべるレイールはどこか不自然であった。
 最も、19歳のレイールが今まで引きこもっていたこと自体が不自然極まりないのだが。
「……腹立つなぁ。自分だけ綺麗に語られやがって。なーにが神だよ、馬鹿馬鹿しい」
 ぼそりと呟いた言葉に、レイールは目を丸くした。
 恐る恐る覗き見たセツの顔は怒りに燃えていた。こんな表情を見るのは、女中に腐った卵を投げつけられたと言っていた日以来だ。
「何だか、セツさんってヘネラル伝説をその目で見てきたようですね」
「へ、は、はい? き、君はなんて事を言うんだい? 数千年前の神話をっ私が見るわけあーりませんじゃないですか」
 思いがけぬレイールの指摘に、すっかり油断しきっていたセツはあからさまに挙動不審になる。
「だって、まるで見てきたように駄目だしをされますし。納得や憤慨する様子なんて、当事者そのものですよ。それに、賢者を否定されますし……」
 また、レイールは悲しそうに目を伏せた。
 けれど、それを感じさせぬようにまたコロコロと鈴を転がすように笑う。まるで、何かを懸命に隠すように。
「いやいやいや。だって凄く昔の話だよ! 居たとしたら、私しわくちゃのおばあちゃんだよ! 化け物じゃないと無理だよ!」
「ふふ、分かっていますよ。 セツさんが伝説のシキだったら可能でしょうけど、そんなこと、ある筈ないですから。そう、ある筈なんて、無い」
 意味深な言葉を口にするレイールの隣で、セツは今更ながら自分を化け物呼ばわりしたことに落ち込む。ちなみに、セツ達は聖戦以降も生きながらえているため、軽く三千歳を越えているらしい。
 年齢だけを見れば、熟女を軽く通り越している。

 気がつけば、日は水面に沈みかけていた。
 自身の目と同じ橙色を眺めながら、レイールは静かに立ち上がる。そろそろ、別れの時間だ。
「私は、古い約束なんです」
 夕日に目を向けたまま、レイールは静かに語る。
 その声は、僅かに震えていた。
「約束は守らないといけませんよね」
「レイール?」
「古い約束は、私情なんて挟んではいけませんよね。感情なんて、不要ですよね」
 はたはたと、レイールの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
 今までレイールが涙ぐむ姿は何度か見たことがあるものの、ここまで感情を露わにした姿を目にしたことが無いセツはおろおろと慌てふためく。
 元より、人の慰め方があまり良く分からないのだ。
「ごめんなさい、セツさん。もう、帰ります」
 混乱するセツを傍目に、レイールは頬に伝う涙を拭いもせずにその場から走り出す。
 幾ら混乱していようとも、19年間軟禁されていたレイールと、旅で鍛え上げられたセツの脚力では圧倒的な差がある。案の定、数秒後にはセツの手はレイールの腕を掴んでいた。
 しかし、レイールはそれを渾身の力で振り払う。
 明らかな、拒絶であった。
「ご、ごめんなさい。でも今は、そっとしておいてください」
 呆然としているセツを余所に、レイールは下手くそなフォームで階段を駆け上がって行く。
 今更になってジンジンと痛みを帯びてきた右手をそっと握り、今度は上を走るレイールではなく、橙に染まる海を眺める。
 上を見上げたとき、レイールと目が合えばどう接すればいいのか分からなかったからだ。
「……痛いな。なんでだろう、城の人達に石をぶつけられるより、暴言吐かれるより痛いや……」
 うっすら赤く染まってきた手を夕日にかざし、そのまま手を瞼の上に乗せる。
 何か気に障ることを言ってしまったのか。あるいは何か嫌な気分にさせるかような話をさせてしまったのか。考えれば考えるほど、心がざわついた。
「大丈夫、大丈夫! 何か傷つけるようなことを言ったのかは明日聞けばいい。うん、明日!」
 半ば虚勢を張るようにしてゆっくりと階段を降りる。自分でも痛々しいとは分かっているが、今はそうするしか無かった。

 ーーしかし、その日から灯台にレイールが顔を出すことは無かった。

 ・

「新人ちゃん、最近ちょっと元気ないねえ」
 いつものように堆肥を運んでいると、隣でうちわを扇いでいたドーヨーがへらへらと話しかけてきた。
「そうですかね? 元気ですよ」
「はは、嘘つくの下手だねー。表情が暗い暗い。なんなら相談乗ってあげようかー?」
 いや、別に。
 間髪入れず断ろうとするが、ふと思い留まる。
 いつも人に迷惑をかけぬように一人で解決しようとするが、たまには人に頼ってみようかと。そうすれば、いつもと違う景色が見えるのではないかと。
 今回のように原因が全く持って不明ならば尚更だ。
「実は、友達を悲しませてしまったみたいで……」
「え、友達居たんだ」
 止めておけば良かった。
 光の速さよりも早く後悔が訪れる。
「嘘嘘、拗ねないでよー。何がどうなってそうなったの?」
 真顔になるセツをからかいながら、ドーヨーは楽しげに彼女の肩を叩く。妙に痛かった。
 一通りの話を聞き終わり、ドーヨーは「そっかー」と呟いて腕を組む。
 最初の方は一緒に車を押してくださいと言っていた亜が、今では隣でドーヨーが歩くだけというのがすっかり定着してしまっている。
「聞いた感じじゃー、その子新人ちゃんに対して負の感情は持っていないんじゃない?」
「でも、いきなり泣いたり、手を振り払ったりとか」
「うーん、それはねー、何かその子の抱えている物が、話している内に膨らんじゃって、キャパオーバーしちゃったんじゃない? だって、謝ったんでしょ、その子」
 確かに、手を振り払った時レイールは真っ赤になった目で謝っていた。
「だったら、何で来ないんだろ?」
「新人ちゃんって、人の気持ちに疎いねー。普通さ、自分が相手に失礼なことしちゃったら、会いにくいもんだよ。ちっちゃい頃とか喧嘩した友達に会いにくかったでしょ? その子は対人関係薄いみたいだしさー」
 歯に物被せぬ言いぐさには少々腹が立ったが、言われてみればその通りだ。
 レイールのような性格であれば、失態を犯した相手に気軽に会いに行けるようなものではない。ましてや、彼女は気にしすぎる性格なのだ。
「ちゃんと会って話しなきゃ」
「そうそう、何なら今からでも行ってきなよー。親方には僕が上手く言っておいてあげるからさー」
 思わぬ申し出に目が丸くなる。
「何鳩が豆鉄砲食らったみたいになってんのさー。こう見えて僕先輩だよ。それに、今日はもうほとんど仕事無いし。ほら、早く行っといで」
 肩を軽く叩かれ顔を上げると、そこには優しい笑みを浮かべたドーヨーがいる。
 瞬間、ドーヨーの評価が仕事をしない先輩から、意外と頼りがいのある先輩にランクアップ。そして、セツはリヤカーの持ち手を彼に預けていた。
「ドーヨーさん、今までふわふわした風船野郎だと思っていてごめんなさい」
「あはは、普通それ面と向かって言う?」
「じゃあお言葉に甘えて行ってきますね! ありがとうございます!」
 満面の笑みでカミングアウトと感謝の意を伝えたセツはそのまま
城の方へ向かって走っていく。
 堆肥の臭いを落とそうだとか、親方に怒られるだろうという、普段ならば考えるようなことは一切浮かばなかった。ただ今はレイールに会いたかった。

 走り去ったセツを見送ったドーヨーは肩を下げると、持ち手をくぐってリヤカーを引く。
「あんな笑顔で言われるとねー。全く照れちゃうよ。ねえ、ダイナリさん」
 名を口にすると同時に、隣の茂みからセツ達の親方ーーダイナリが姿を現す。
「まだ堆肥場に入ってねえんだ。迂闊に名を呼ぶんじゃねえ」
「ああ、失礼しました。親方」
「ったく。おめぇは何でも勝手に決めやがって。なーにが行っといで、だ」
「でも、ダイナリさんも多少は思っていたでしょう?」
「へっ、あんなしょぼくれた顔毎日見せられちゃぁ、たまったもんじゃねぇからな」
「じゃ、結果オーライだ。古き約束の正体も分かりましたしね」
 門を開け、二人はゆっくりと奥へ、庭師だけが踏み入れる堆肥場へと進む。
「ああ、古い約束は思わぬ収穫だったな。もう少し、泳がせておくか」
 意味深な言葉と共にギギギィと軋んだ音を立てて、金属製の門が閉まっていく。
 閉まりきった門にはマニャーナ国の獅子のエンブレムが刻まれている。しかし、堆肥場側から見るとマニャーナ国のエンブレムの上に小さく鷲のエンブレムが描かれていた。

 ・

 一方、走り去ったセツはというと、勢いよくスタートを切ったは良いものの肝心のレイールの居場所が分からず、大絶賛城内で迷子になっていた。
 何となく城に向かって走ってはみたが、そもそもレイールが何処に住んでいるのか分からない。城に来たのも、レイールが絵本に出ていたお姫様に似ていたからだ。
 単に探すだけならば虱潰しに一つずつ部屋を空けていけば良いだけの話なのだが、城内から卑下されている職に就いているセツは人目を避けて行動せねばならない。
 万が一見つかれば、騒ぎになるのは当然。最悪、追放にもなりかねない。
「お姫様って何処にいるもんだ? やっぱり、窓際? っと、危ない。人だ」
 しかし当の本人はそんな窮地に立っているとは思えないほど気楽に。否、むしろ楽しんで探索していた。
 レイールはお姫様と勝手に決め込んだセツは、これまた独断と偏見に満ちた推測で黙々と探索を進める。
「もうすぐ儀式ね」
「先輩、儀式とは何ですか?」
「ああ、貴女は最近配属されたから知らないのね。毎年この時期になると王族と貴族が集まって、離れの塔で儀式をするのよ。私たちは見ることすら許されないのだけど」
「そんなのがあるんですか……先輩、何だか臭くないですか?」
「言われてみれば……何でしょう、汚水のような……」
 ーーマズイ!
 臭いを嗅ぎつけられたセツは大急ぎで花瓶の陰から出ると、周囲と階下に誰もいない事を確認してから窓から飛び降りる。その際にいくつかの木の枝を折ってしまうが、この際ばかりは仕方ない
 芝生に着地すると、念には念を入れて椿の陰に入る。そして服の臭いをそっと嗅ぐが……、なるほどかなり臭かった。
「おい、何をしている」
 草むらで一人悶えていると不意に背後から声を掛けられた。心臓に冷水を浴びせられたような感覚に陥りつつも、素早く振り返る。
 途端、セツの顔にほっとした安堵の表情が浮かぶ。
「ココー……」


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