『食べる』という単語は基本的に食物を口に運ぶ行為に限って用いられる。それから食べるイコール食欲イコール生理的欲求な訳であり仕方ない事である。

で、私は何が言いたいのかと言うと。





「ごめんなさい、私何かしましか?」

「いや、何も」

「え、じゃあなんで私…え?何もしてないのに……エースさんは何してるんですか?真昼間から」

「押し倒してんの」

「ンなもん見ればわかるわ。てか何つーことを笑顔でサラっと言っちゃてんですか」



何故か私はこの船の二番隊隊長である『ポートガス・D・エース』によって、彼の部屋で、彼のベッド上に組み敷かれている。そう、私は押し倒されているのだ。

そこで冒頭に戻ろう。
私が人生初、『食べる』について色々考えた理由はこの男の一言によって生じた。



「私、まだ仕事が…」

「名前はどうせ非戦闘員で雑用だろ?」

「ええ…まあ。私、戦う能力皆無ですから…って違う。何をしたいんですか。私あなたに何もしてな、」

「いやー、たださ…」



エースさんは私の異論を遮りわざとそこで言葉を切った。そしてすぐに彼の顔が近付き私の顔を横切る。

知らぬ間に両手は彼に押さえられ身動き取れなくなってるし、それを良い事にエースさんは口許を私の耳に近付け、息をかけるように……甘くて低い声で囁いた。






「たださ、名前が異様に美味そうに見えたから」

「……カニバリズム?ネクロフィリア?」

「それ、どんな意味だよ」

「人肉嗜好、カニバリズム。屍体性愛、ネクロフィリア」

「んー…。そういうんじゃねェんだよ」

「……いや、私的にはツッコミが欲しかったのですが…」



彼の手から両手を解放されるも、跨がられているのでどっちにしろ動けない。

エースさん、私の上で何か考え込むように腕組む前に私の上から退けてください。


しかし私の願いは叶うどころか更に状況が悪化する。



「ひっ…!?」

「うっわ、色気ねェなァ」

「ななな何をっ……!!?」



彼は退けるのでは無く、いきなり屈んで私の首筋に噛み付いた。噛み付かれた瞬間、ピリッとした痛みが走って思わず変な声をあげてしまう。

私はエースさんをめいいっぱい睨んでやるが彼は楽しげに口角を上げ喉の奥でくつくつと笑うだけだ。
それが何だか悔しくなり、半ばやけっぱちで吐き捨てるように言った。



「何をしたいんですか、ホントに」

「そうだなァ……」



未だ妖しげな笑みを浮かべたまま、エースさんはグッと顔を近づけてきた。そして彼の両手は私の両手と指を絡ませ合う。所謂恋人繋ぎ。
徐々に互いの額が触れる位の距離まで縮んだかと思えば、エースさんの唇が私の唇に軽く触れた。イコール、キスされた。
突然過ぎる行為に私が目を見開いて驚いていたら、また耳元で低く甘く――



「名前を食ってやりてェ」







食べるという本能について
たった今、彼の言葉の意味を知る


それは健全な男なら必ず持ち合わせる?欲求不満?というものだった。


(何故私がターゲットに…!?)
(そりゃ俺が名前に惚れてっから)
(え…?)

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