頭を背を何度も何度も撫でてもらって、漸く泣き止んだ僕に、青年は家の中からとってきた麦茶をくれました。ありがとうございます、と言えば、不器用に青年が笑います。落ち着いた僕は、まず謝りました。勝手に入って、遊んでいたこと。いきなり泣いてしまったこと。話している内にじわじわとまた涙がこみ上げて、しゃくり上げそうになりながらも、なんとか「ごめんなさい」と言えました。横に座った青年は、気にしてねぇよ、とぶっきらぼうに答えました。やっぱり怒らせてしまったのか、と肩が震えて、それに気づいた青年が慌ててフォローを入れてくれます。 「や、って言っても、ここ俺の家じゃねぇからさ。俺も偉そうなこと、言えねぇんだよ、」 青年は、この家の持ち主が、いつ帰ってきても良いように、綺麗にしているんだ、と言いました。この整えられた草花が、塵一つない縁側が、青年の手で為されたものだと思うと、不思議な感じがしました。 「持ち主さんと、仲良しさんなんですね」 ――そう言った時の、彼の表情ったら!怒っているような、嬉しいような、寂しがっているような、照れているような――あー、とかうー、とか唸って、一向に口を割らない青年に、僕はもう良いです、と言いました。それが答えだ、と思ったからです。 「また来ても、いいですか」 僕、ここが、とてもとても好きなんです。 本心から訴えれば、彼はちょっと目を見開いて、それからくしゃりと顔を歪めて、構わないよ、と言いました。 変わらないな、とも、言いました。 |