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木吉×日向
※モブ視点です


僕の話を、聞いて下さい。

幼い頃、身体が弱かった僕は、学校帰りの探検が日課でした。探検とはいえ、散歩の延長みたいなもので、竹やぶに突っ込んだり、猫を追いかけたり、飽きもせず良くもまぁ同じところをぐるぐるしてたなぁ、と思うのですが。

そんなある日のことです、いつものように、適当に道をいって、門を曲がったところに、古い空き家を見つけました。今時珍しい、大きな日本家屋でした。古いとはいえ、庭も玄関の石畳も、きちんと掃除されていて、やけに小綺麗な空き家でした。これは、何か面白いところを見つけたかもしれない。その日から、僕はその空き家に通うようになりました。今考えると、とんでもないことをしでかしているのですが、いかんせん子供です、他の誰かがいるなんて、想像もしてなかったのです。

彼に出会ったのは、夏の日差しが眩しい頃でした。縁側に座って、家から持ってきたお菓子を何気なく食べていた僕が、ふと顔をあげると、当時の僕の背丈をゆうに越えた、大きな向日葵の隙間から、青年が姿を現しました。僕はびっくりして、その場から動けませんでした。まさかその青年も、誰かがいるとは思っていなかったのでしょう、手にしていたホースを気まずそうに握り直していました。

「、あー、お前、こんなところに来ちゃ、危ないぞ」

確かに、そこは随分家から遠い場所でしたから、彼は幼い自分を諭すつもりで言ったのでしょう。ですが僕には、怒られたようにしか思えませんでした。あっという間に涙が溢れて、わんわんと泣き出してしまったのです。青年は今度こそ狼狽して、ホースを手放し、向日葵の波を掻き分けて、僕の方へとやってきました。
夏の青空と、入道雲、目に刺さるような向日葵の黄色と、青年の黒髪が、涙で歪む視界で、やけにくっきりしていました。


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