キルア×ゴン ゴンは全然分かってない。 底無しの沼のような闇から引きずり上げて、血塗れの手でも構わないと握り締めて、ずっと傍にいて欲しいと言ってくれた。君が願うなら、誰だって殺すよ。邪魔者だって消してあげるし、どんなものでも奪ってみせる。ゾルディックの肩書きだって、一般に綺麗と称されるこの身体の全部だって捧げても良い。でも離れて行くなら許さない。こんなに依存させておいて、オレを置いていくなら、無理矢理にでも閉じ込めるよ。でも泣かれたい訳じゃない。オレはゴンの笑顔が大好きだ。それがオレだけのものでなくても、その笑顔が一番近くで見られれば良いんだ。ねぇ、だから、何をそんなに不安がる?オレが、ゴンを、嫌うなんて、馬鹿な。この心を全て曝け出したら分かってくれるのかなぁ。恐がってしまったら嫌だからしないけど。 それにしたって、こんなに、こんなに依存しているのに。 (ほかの誰を愛せというのか) 殴ってしまったこと、後悔していない。 (キルアは。キルアには、きっと、)(素敵な、女の子が、) ゴンはオレを甘く見過ぎている。そりゃあ多少人とは違う環境で育ったから、ちょっとは大人びてたって仕方ないさ、それにしたって、オレはまだ酒も飲めないガキだ。子供だ。子供なんて、皆ワガママだ。欲しいものは欲しい、大事なものは傍に置きたい、奪われたら殴ってでも取り返すし、拒絶は嫌い、なんとも分かりやすいじゃないか。 なのに、どうして、なんて、何度考えてもゴンだからとしか言えなくて、考えるだけ無駄だった。 (キルア、おれ、怖い)(…ごめんね) 頬は赤く腫れていた。それ以上に、目は赤かった。 「…あ」 オレ、は。 「ゴン」 オレは、なんてことを。 「キルア、あの、ごめんね、おれ、」 「ゴン、違うんだ、お前は悪くない、オレ、言いそびれてたことがあるんだ」 逃がしたくなくて、さっさゴンの頬を叩いた腕でゴンの手首を握る。不思議そうに首を傾げるゴンの頬はまだ赤くて、熱そうで。その痛みが全部オレに返ってくれば良いと思った。 「ゴン、さっきも言ったけど、オレお前が好き」 「うん、おれもだよ」 「オレの好きはね、ゴンの為なら、誰だって殺す、邪魔者だって消してあげるし、どんなものでも奪ってみせる。ゾルディックの肩書きだって、一般に綺麗と称されるこの身体の全部だってあげるよ。でも離れて行くなら許さない。こんなに依存させておいて、オレを置いていくなら、無理矢理にでも閉じ込めてやる。でも泣かれたい訳じゃない。オレはゴンの笑顔が大好きだ。それがオレだけのものでなくても、その笑顔が一番近くで見られれば良い。ゴンが幸せならオレも幸せ、だけどその幸せからオレを弾き出すなら殺す、そういう、好きなんだ」 半分も反応出来なかったろう、きょとんと目を丸くするゴン、端々に滲む闇に気付いただろうか。さぁ、オレの心はもうお前の目の前に曝け出した。捨てても刺しても構わない、ゴンの唇を仰視した。 「それは、」 それは。 「おれと、おそろいだね、キルア」 そんなおれが、おれは怖かったんだ。ごめんね。 そう泣いて笑った愛し子に、ああ、もうこれ以上誰も愛せない。 ほかの誰を愛せと言うのか |