(tf3のあのシーンで、もしメガ様の所に現れたのが司令官だったら) 「むぅ…っ」 瓦礫の中で目を覚ました。 頭上を通り過ぎていった戦闘機のキィン、という鋭いエンジン音を皮切りに、聴覚センサーが回復し、音が戻ってくる。 止まらない発砲音と怒号、煙がとぐろを巻いて空へ昇っていく。戦場だった。センチネルとの決着をつけねばならない。かつて崇拝した師は消えたのだ。ぐらぐらする頭を押さえて立ち上がる。その、ビルの隙間。 「…プライム?」 「!」 知覚するより先に体が動いた。エナジーブレードがメガトロンの顔すれすれに突き刺さる。体を預けていた壁に大きなヒビが走るのを横目で見て、メガトロンは息を吐いた。 「落ち着け愚か者。この至近距離で殺せぬほど腑抜けたか」 その体が動かないのを確認し、オプティマスはゆっくりとエナジーブレードを引き抜く。 メガトロン。 その姿をはっきりと目にするのは随分久し振りだった。あちこちが錆にまみれ、特に痛々しい、ぽっかり欠けた顔の右半分には小さな機械が群がり、傷口を抉っているのだろう、ぱちぱちと絶えず火花をたてている。リペアの施されていない剥き出しの内部回路に、流石のオプティマスも眉をひそめた。オプティマスの不躾な視線を知ってか知らずか、メガトロンは空高く浮かぶ、金属惑星を指差す。懐かしい母星、荒廃しきった様子が地上からもはっきり見えた。 「見えるだろう、お前にも、あの星が。我らの母星が」 やっと帰れるのだ…と譫言のように呟くディセプティコンの王に、かつての荒々しい激情は無い。まるで糸の切れた傀儡のようだった。カメラアイだけが煌煌と燃えている。 「最早勝敗など取るに足らぬ。星へ帰るためならば忌々しいセンチネルであろうと手を貸す」 そもそもの原因はお前じゃないかと言おうとして、オプティマスは、メガトロンが確かな意思を持って傍らに立て掛けられた愛銃を掴むのを見た。 「しかしお前が、儂の安全と星の無事を保障するならばセンチネルがどうなろうと構わない」 つまり、それは。 ぞわぞわと震えが走った。 彼は暗に協定を結ぼうと持ち掛けているのだ。この戦場で。オートボットが、ディセプティコンが、人間が、ない交ぜになって倒れるこの瞬間に。 「馬鹿なことを、」 ブレインサーキットが再びずきずきと痛みを訴えている。メガトロンが、武器を握ったのを見た筈だ。だが、最早それは鎖で縛り付けなければ支えられもしない有様だった。 「さあ、どうする?」 突如として街中に甲高い電子音が響き渡った。―これがオートボットだったら!人間だったら!私は、激情に任せてメガトロンを殺せたのに!もしくはメガトロンが怒りに拳を奮ったならば、応えることが出来たのに!彼はむっつりと黙り込んで、静かにカメラアイを閉じただけだった― 消えた信号は、スタースクリームのものだったのだ! 私は。彼を、メガトロンを、許すのか、許さないのか? |