箱庭 7 | ナノ


その日、基地の前で、メガトロンは明らかに暴行された姿で捨てられていた。ディセプティコン内部に、協定に批判的な不穏分子の存在があるのは知っていたから、大方闇討ちでもされたのだと見当づいた。
彼の体はボロボロであったが、致命的な欠陥は見られなかった。それにホッとしたのも束の間、目を覚ました彼は、記憶を失くしていた。気が遠くなる程長く続いた戦争も、母星も、自分のことすらも。脱け殻となった彼は、以前とは比べるべくもなく脆弱で、悲痛だった。

そんな彼を渦中に放り込むのは気が引けて、こっそり基地で匿うことにした。
いずれ記憶は戻る、それまでの戯れだと思えば良い。協定を結んでから築くはずだった信頼関係が、少し早く出来るだけだと、そう思っていたはずなのに。

メガトロンに朝晩の挨拶の声をかけ、食事をし、彼の話に耳を傾けていると、かつてのサイバトロンで過ごした日々を思い出した。私はこんなにも、メガトロンと穏やかに過ごせたのだ。ただそれを忘れていただけで。

「メガトロン、今日は何か思い出したか?」
「いや、何も…。すまんな、オプティマス」
「いや、構わない。ゆっくりで良い、少しずつ思い出して行こう」


何時からか、思い出さずとも良いのでは、と考えるようになっていた。思い出せばまた、あの何処か張り詰めた空気に戻らねばならない。それが本来のはずなのに、酷く怯えている自分がいて、ぞっとした。…だが、ディセプティコンに首謀者がいる以上、どうしてメガトロンをあそこに戻せるだろう。これ以上傷つけは、決してさせない。


回想



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