(ビー×サム)※3バレ 小さな歯車を、お互いの指に嵌めて―永遠を誓う。 (眩しい) 嬉しいはずなのに、大好きな人の幸せを、望んでいるはずなのに。 (その永遠の宣誓は、自分では駄目?) (人間でない自分には、なしえない?) 意識の底で暗い感情が渦巻く。スパークが悲鳴をあげている。目を閉じる。もう何も考えたくはない。 (ねえ、サム) (サム、) 「バンブルビー?どうかした?」 意識が覚醒した。ボンネットに腰かけていたサムが、不思議そうな顔をしている。慌てて何でもないよ、と繕うけど、嘘だよね、分かりやすいよ君、と言われてぐっと言葉につまる。サムには何でも見透かされてしまう。 「バンブルビーは、変なところで自分に厳しいから。…普段はあんなに甘えん坊なのに」 若干思い当たる節があるだけに、何も言えない。思わずぷきゅうと気の抜けた音が出る。宥めるようにボンネットに伸ばされた手の心地好さに、また意識が遠のく。 あの日。彼の心臓が音をたてるのを止めたあの日。忘れない、忘れることがどうして出来るだろう。 何よりも守るべき存在だった。失ってはいけない人だったのに。彼の幻影はいとも簡単に指をすり抜け、永久に失われた。 彼はやがて目を覚ましたけれど、知ってしまった、いつかそれは、永遠の別れになると。 そしてその別れは、遠くない未来にあるのだと。 「バンブルビーってば。どうしたの?調子悪いの?」 ボンネットから降りて、バックミラーを覗き込むように頭を下げたサムの首から、何かが垂れ下がった。 《?》 「え?ああ、これ?」 バンブルビーの視線に気付いたらしいサムが、首から紐を引き摺りだす。その先、控えめにぶら下がるのは―あの、歯車? 「だってバンブルビーからのプレゼントだよ。捨てる訳がないじゃないか」 …ああ。サム。 「ほらこうすればなくさないだろ?なかなか良い案だと思っ…バンブルビー?」 人とロボットに、永遠など無いと知っている。いずれ訪れるだろうお別れも。永遠を誓うことが、どれだけ愚かかも。 (だけど、だけど) 「バンブルビー、」 《サム》 トランスフォームし、サムを潰さないように加減しながら抱き締める。甘えん坊だなあと笑う彼の温もりが、じわりと広がる。 (愛しい) 《サム》《好き、だーい好き!》《キミを守ろう…》《永遠に!!》 そう。この思いはきっと褪せない。どれだけ涙が零れようと、スパークが千切れようと、彼がこの腕の中にある限り。 永遠に重ねた恋心 ― 椿/屋四重/奏「トワ」 |