息するように重ねた | ナノ


「おにーさん、危ないよ」

噴水のイルミネーションに反射した金髪が、きらきらと輝いていた。差し出された手を無意識にとる。置いていくぞ、という同僚の声は、耳を素通りした。
酒で揺らぐ視界では、顔はよく見えない。ただ、空色の瞳が、綺麗だと思った。突然、ばしゃ、と一気に噴き出した噴水の水が、頭から降り掛かってくる。火照った体には丁度いい。慌てる青年ごと、水滴の中に飛び込んだ。
「あはは、ははは」
何もかもがきらきらしていた。噴水を彩るイルミネーションも、自分の左手を握る青年も。



「…んあ?」
ずきずきと痛む頭を抱えながら、サムは目を覚ました。何処からかコーヒーの匂いがする。…煎れたっけ、僕?
「ていうか寒…い…」
シーツを捲れば。自分は辛うじて下着を身に付けているだけ、つまりほぼ全裸。そこで意識は急速に回復した。見慣れない部屋、見慣れない風景。サムは絶叫した。


「おはようお兄さん、よく眠れた?」
匂いをたどり、着いたのはキッチンだった。ベッド脇にあった自分の服を着たサムの、ただならぬ気配に気付いたらしい青年は、口をつけていたカップを置く。
瞬間、サムは青年を平手打ちした。
「…っ!」
「最ッッ低!!」
怒りのままにサムが出ていったドアを見つめ、青年は熱を持つ頬を撫でる。
「かーわいい」
それが、出会い。

息するように重ねた



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