フルボッコ宮 | ナノ



花日
※凄く短い



ばちんと頬から大きな音がして、それからじんわりと熱が広がってくる。
こちらを見つめる眼鏡の奥の瞳が、信じられないと言っていた。

「花み、」
「日向、下がって」

優男がすかさず手を引いて、宝物のように自分の背中に隠す。
伊月、違うんだ。
困惑した声が鼓膜を揺らしても、決意までは揺るがないのだ、優男は視線を俺から外さない。そうすることで、俺を射殺せるとでも思い込んでいるかのように、真っ直ぐに。
その目ん玉、抉り出してやろーか。

仲間に向けられた殺気に気づいたらしい、まだ足りなかったか?なんて物騒な言葉と共に、目の前に立っていた鉄心が、膝をつく俺の肩を、ぐいと足で押した。靴裏の凹凸が肩に食い込んで地味に痛い。

「日向に近づくな、傷つけるなって、あんだけ言ったのに。懲りないなぁ、お前」

身体に見合う規格外の手のひらから繰り出された強烈な張り手は、そのまんま奴の怒りを表していた。ぶっ飛ばされた拍子に口の中を噛んだのか、血の味がする。

「っは、違うだろ、お前は、知らない間に眼鏡クンを取られてた、その事実が気に食わねえんだ」
「……」

容赦は、無かった。
肩にあった重さが消えた、そう思った時には側頭部にスニーカーの爪先が入っていた。脳味噌を、視界を激しく揺さぶられて、たまらずその場に嘔吐する。
止めろ木吉止めてくれ俺が悪いんだ花宮花宮花宮はなみや。
暴れる眼鏡クンを赤髪が羽交い締めにして押さえ込む。

なんだ、これ。

口の中は胃液と血でぐっちゃぐちゃ、頭は痛ぇし頬はじくじくするし、うっぜぇうっぜぇ眼鏡クンのお友達は、さも当然と言わんばかりに、そんな俺を見下ろしてきやがる。

「は……、はは、っ、くく、ふはっ、」

思い描いていた通りの景色、まさかこんなに想像通りとは。最早笑いしか出てこなかった。
花宮。
眼鏡クンの嗚咽を最後に目を閉じた。

「あーあ、だから、言ったのに」

こうなるって、さ。


どうしてぼくをすきになんかなったのさ





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花日の終焉。



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