流れ星 | ナノ



「流れ星の正体は主に彗星から放出された塵である。」


燦々と陽を散らす下で玉子焼きを頬張りながら霧野は言った。
口に物を入れた状態で喋るのよろしくないと幼い頃に母親に注意された俺は少しだけといつもより忙しく口を動かしごっくんとミートボールを飲み込んだ。


「三限の話か。」

「神童はどう思う?」

主語を言え主語を、と頭の中で飽きれる。


流れ星について、か。

「この街は人工的な光が多いから見れたことは無いが、旅行先で見たときは誰かが操作してるんじゃないかと疑ってしまうくらいそれはそれは多く流れて感動したのを覚えているな。」

「それを綺麗だとは思ったか?」

「その言い方だとおまえは思わないのか?」

俺が考えてる間に霧野は食べ終えたらしく、紙パックの紅茶を右手に立ち上がっていた。


「昔は綺麗だと思ったけど、今はそう思わないし印象もマイナスだ。だって塵なんだろ?必要が無くなって捨てられたものを綺麗と言えるか?キラキラ光るのも地球の大気に衝突して突入たからだろ?事故の合図ってことなんだろ?それと話が少しずれるけど、『流れ星が消えるまでに願い事を3回となえると,願い事がかなう』っておまじないあるけどなんであんなものを作ったか意味が分からない。星が流れるから流れ星なんだろ?流れてるものに3回も願いを言えるか?その願いは他力本願にするものなのか?」

霧野の右手が少し濡れていた。無意識に力を込めたんだろう。
食べ終わった弁当を袋に仕舞い込んで俺も立ち上がる。ミニタオルを持って。


「事故の合図と言われると少し笑ってしまうな。願いは自分で叶えるものだと俺も思う。他力本願な内は何も変わらないし、言い方が悪くなるがその程度のものだったと見られる。まぁ、俺が偉そうに言えることではないけれど。」

天馬、そして円堂監督に出会わなければ俺はずっと決められたサッカーをしてたであろう。
そう考えると二人は流れ星のような存在だ。


そうこう話してる内に予鈴が鳴ったので慌てて教室へ戻る。
あ、思い出した。

「なぁ霧野知ってるか?流れ星には和名が沢山あって、ほかの星のところへお嫁に行く星という意味で『星の嫁入り』、遊びに来た星という意味で『遊来星』というのもあるらしい。ロマンチックと言われる流れ星にこんな意味もあるなんて面白いよな。」

「へぇ奥が深いな〜。お、セーフ!まだ先生来てないぞ!」



なぁ神童知ってるか?
星の仲間から縁を切られて落ちていく『縁切り星』のことを。


流れ星なんて全然綺麗じゃないよ。



流れて絶望