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「あーあ、こんな外でキスさせて」
「シンが勝手にしたんでしょ?」
「我慢出来ない事言うおまえが悪い」
シンは私の肩を掴んで立たせるとそのまま手を引いて歩き出す。
恥ずかしいって言いながらも手を繋いでくれる。そういう私のワガママを聞いてくれるシンの優しさに甘えすぎだ。私は。
「……夕方上がりとか、別に珍しい事でもないと思うんだけど。何で?」
今日予備校まで来た理由を聞きたいんだろうけど、きっかけがミネの話だからちょっと言い辛いな。
「ミネが昨日シンに会ったって言ってて」
「ああ、ミネなら勤務時間ギリギリに会ったから、即刻行かせたらなんか怒ってたな」
冷たいのにはやっぱり理由があったんだ。シンの気遣いは不器用で分かりづらいから。
「だから、一瞬でも会えてるのが羨ましくて、私もシンに会いたくて」
「はあ、おまえな……」
それっきりシンは黙り込んでしまった。何か気に障る事言っちゃったかな。やっぱり、忙しいのに会いたいって面倒くさいよね。
マンションまでしっかり送ってくれたシンに手を振ろうとしたら、そのままマンションの壁に押し付けられた。
「ここなら誰も見てないか」
キョロキョロと辺りを見回してから、赤い瞳が私を射抜いてくる。
「キスしていい? 今日のおまえ、可愛すぎて色々我慢出来ない」
「えっと……」
拒否したらシンは何もしない。それはちょっと寂しい。キス、嫌じゃないよ。でも、シンとキスすればする程想いが溢れてどうしたらいいか分からなくなる。
ここは勇気を出すところだ。次いつ会えるか分からないから。
「!」
返事じゃなくて行動に移した。間近にあった唇にキスをして、シンの肩に手を乗せる。
されるがままのシンから顔を離して見ると、耳まで真っ赤なシンと対面した。
「シン、好きだよ。私もシンの希望叶えられるように頑張るから、だから、他の子見ないで……」
自分勝手な願い。もし私より良い子が現れて、その子がシンの希望を全部聞いてあげられるような子だったら、勝てるかどうかなんて分からない。
「バカだろ。バーカ」
優しいバカの後に優しく腕の中に閉じ込められる。
「オレがおまえ以外なんて無いから。それに、たまに素直になられるだけで、すげえ幸せだって思ってるよ」
背中に腕を回せばシンの手に少し力が籠もった。
大好き。私だけの場所。誰にも渡したくない。
そう小さく呟けば頭にキスが降ってきた。
2013/03/15
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