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アイツに背を向けて深呼吸した。はあ、落ち着け。
理性を総動員で繋ぎ止めてる最中なのに、ぺたぺたと近付いてくる裸足の足音が聞こえた。
「服、乾燥機にかけて。そうしたら乾くだろ。だから、それまで我慢して」
「うん……なんかごめんね。参考書持ってきただけなのに気遣わせて」
「そんな事気にしなくていいからオレから出来るだけ離れて」
「分かった。乾燥機借りるね」
足音が遠ざかってほっとする。なんなんだよあの格好。衝撃的過ぎて凍りつくレベル。
なんかこう、彼女が自分の服着て、大きすぎる感があるのを期待したのになんだよあれ。
確かに大きすぎて肩からずり落ちそうだ。ざっくりしたVネックを着せるのはダメだ。
遠ざけても焼き付いて離れない。今日はもうアイツの事見れない。
部屋に戻って頭を抱えているとアイツが戻ってきた。
「一時間で乾くと思う。ごめんね。それまでお邪魔する」
「別にいいけど」
「ごめんね……」
いつもより低い声になる。不機嫌だと思ったのか弱々しい声でまた謝られる。
「おまえはオレからどう見えてるか分かって無さ過ぎなんだよ。その服貸したオレも悪いけど、今日はもうおまえの事見れないから」
「うん……そっか」
「そんな寂しそうに返事されても困る。そんな格好のおまえ見て、何もしないって言い切れないから」
今だってそこに居ると思うだけでどうにかなりそうなんだよ。情けないけどこれがオレの精一杯。
「シンは優しいね。大好き」
「っ……そういう事今言うなって。抱き締めたくなる」
「シン」
声がいきなり近くなって吃驚した。
「何で近付いてくんの」
「離れてるの寂しいから。シンに、抱き締めてもらいたいから」
「……バーカ。どうなっても知らないから」
求められてあっさりと崩れ落ちた。腕の中に引き込めば布一枚なせいで数倍柔らかい。あんまり力入れると痛くしそうで怖い。
いつも使ってるのと同じボディソープを使ったはずなのに、何でコイツからは花が花弁を広げたような甘い香りがするんだろう。
「シン、勉強の邪魔してごめんなさい」
「今更だよ。おまえ帰ったらその分頑張る。だから……」
白い肩にキスすればくすぐったそうに身を捩る。
「少しだけおまえを味わわせて」
キス以上しない自信無いけど、煽ったおまえが悪いんだからな。
そう囁けば頬を染めて抱き付いてくるから、ああ、もうダメだなと思った。覚悟しろよ。
2013/03/09
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