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俺からすればもう飲み物じゃなくなっている真っ白なコーヒーを口に含むシンを眺めながら本題に戻る。
「何で最近グレちゃったのかなー。お兄ちゃんそんなこと教えたことないんだけど?」
「出た、兄貴面。うざ。別に、おまえにも関係ない」
「あいつが絡んでるのは一目瞭然だけどな」
「っ!」
分からないのはあいつくらいだと思う。ここまであからさまに、というか、最近のシンの見た目は段々とバンドマン寄りになってきている。
派手な髪色、ボディピアス。あいつのバンドのメンバーそういう男ばっかりだもんな。
大方、真面目さを馬鹿にされたか、それとも引き摺り込まれたか。
「そんなに背伸びしても大人になれるもんじゃないよ。見た目変えたところでおまえの本質が変わるわけじゃないでしょ」
「……一番年上のおまえには分からないよ」
そうだな。お兄ちゃんには分からないよ。そうやって二人がお互いに意識したりしてるのに、俺だけ何も出来ずに置いていかれてるんだから。
「何しても年齢だけはどうにもならないことくらい、オレが一番知ってる」
シン、違うよ。年齢なんて関係ない。シンと違って俺は何も変われないし、そうやって変わろうとすることすら出来ない。怖くて、出来ない。
「俺はシンを凄いと思ってるよ」
「は? 何だか知らないけど、何も出ないからな」
いきなり話が変わって訳が分からなそうにしながらも、シンは甘い甘いコーヒーを飲み干して、さっさと玄関に向かっていった。
「どこまで仮定してるのか知らないけど、あいつに余計なこと言うなよ」
「はいはい」
そうやって赤くなったりするところはまだまだ可愛いのにな。
シンがいなくなった後、さっきまで何をしてたのか思い出してその作業に戻る。
もうほとんど会わなくなったりしたって言うのに、こうやって嵐のようにやってくる幼馴染達。
大きくなっても変わらず可愛いとは思うけど、複雑な思いはどんどん膨れ上がっているように思う。
シンも、あいつも、変わっていく。
二人に何も悟られないまま、このまま、俺は俺のままで居られるだろうか……
2015/02/14
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