ウキョウとの場合
ジャムのスプーンを支えに中を覗き込んでいるウキョウさん。マーマレード、見てるだけでそんなに面白いかな?
「ウキョウさん」
「え? わっ、わわわわわっ!!?」
私は後ろから声を掛けただけ。ウキョウさんは振り返ろうとして、うっかりスプーンに添えていた手を滑らせ、頭が大きい分勿論重心も頭に傾いて、そう、ジャムの中に落ちていった。
一瞬、ウキョウさんらしいなあ……なんて和みかけて、このままだとウキョウさんがジャムで溺れ死ぬことに気がついた。
「ウキョウさん! 今助けます!」
ジャムの中に指を入れてウキョウさんを引っ張り上げようとするものの、意外にもぬるぬると滑って上手くウキョウさんを救い出せない!
「掴めた! あっ」
と思ったら帽子だけ救出してしまった。
ウキョウさんはジャムの中でそっと目を閉じていく……ってダメ! 絶対にあなたを死なせはしない!
もどかしいことしてる場合じゃない! 私はジャムの瓶をひっくり返した。
どろどろとジャムが流れてくる中、それに紛れてウキョウさんも外に出てくる。
「ウキョウさん! ウキョウさん?」
頬っぺたを必死でプニプニしていたら、ウキョウさんがジャムを噴水のように吐き出して目を覚ました。
「ああ、君……俺、そっか、ジャムで死にかけたんだ……今まで色んな死の苦痛を味わったけど、ジャムで溺死はないな……」
「何だかよく分からないですけど良かったです!」
いつも通りのウキョウさんを見ていると涙が出てきた。とは言っても二頭身のウキョウさんだけど。
「ええっ? 君、こんなことで泣かないで! ほら! 俺全然大丈夫だから! ね!」
「そ、そうですね」
そう言ってピョンピョン跳ねて見せるウキョウさん。ジャムに浸されたせいですごく服が重そう。
早く洗ってあげたい、けど、このサイズを洗うとなるとまた溺死しそうになるかもしれない。
「髪とか服ぐちゃぐちゃになっちゃいましたね……どうしましょう……」
「平気平気! いつも寝てたら池や川に落ちるし! あんまり変わらないからね!」
全然解決してないのにトンデモ解決策を出されてしまったように思う。
「とにかく! 君は気にしなくていいから! 俺は……っ……!?」
「ウキョウさん?」
突然ウキョウさんが胸を押さえて苦しみ始めた。どうしよう! やっぱり大量のジャムを飲んでどこかに支障が出たかもしれないのに、このサイズのウキョウさんとなると救急車も呼べない!
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