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「シン……なんか疲れてる?」
「ちょっと、さっき変に絡まれたから」
彼女の家で彼女を後ろから抱き締める。まじで疲れてたけど、そんなの無かったことになるくらい癒される。
小さな肩に顎を置くと、彼女がオレの携帯を眺めるのが視界に入った。
「ふふ、ここに貼ってくれてるんだね」
「なんでおまえはすぐわかったわけ」
「シンはどこかに貼ってくれてると思ったの。これ、不透明だから。ここかなって」
オレの携帯の保護カバーを外して、カバーの内側に貼ってるこの間のプリクラを見て彼女が嬉しそうに笑う。
「落としてもすぐに取れない。開けようとしなきゃ見れないところ」
細い指先が笑顔が引きつって出来損ないみたいな表情で写るのオレをそっと撫でる。
「貼ってるだけ、そんなことで喜ぶの」
「だけじゃないよ。ワガママ聞いてくれて、それで貼ってくれてるんだもん」
なんかこいつって、結構勘違いしてるんじゃないか。
「別におまえから言われて嫌って言ったことやるっての、ワガママの内じゃないんだけど」
「え……?」
「だってさ、おまえに何かして、やらなきゃ良かったと思ったことなんてない。むしろ、いつもやって良かったって思ってる」
この距離で話すとくすぐったいのか彼女は身を捩る。
「もっとすげえこと言われなきゃ驚かないし、出来ないって言わない」
「シンって実は結構甘やかしてくれてるよね」
「……好きな女の笑った顔が見たいって、当たり前なことだろ」
抱き締める腕に少しだけ力を込めると苦しいのか身動ぎする。弛めてやると腕の中で向きを変えて、至近距離で見つめあうことになった。
「なんだよ……あんま近いとキスしたくなる」
「……してもいいよ。私もシンのして欲しいことしてあげたいって思うから」
この距離で照れられると凄い破壊力。あんまり可愛いと困る。目を合わせてられなくなって逸らした。
その間もずっと見つめられるからたまらなくなる。
「じゃあ、気が済むまでさせてって言ったら?」
「っ、えっと、できる限り頑張る……!」
一瞬困った顔をしてから直ぐにキリッと眉を持ち上げ、勇ましくも肯定してくれるようになったことが感慨深かった。
「でも、ゆっくり、優しくしてね……?」
「うん。嫌になったら早めに止めろよ。止めてやれなくなるかもしれないから」
「……ならないよ」
「バーカ、煽んな」
赤くなった彼女の頬は熱い。そっと持ち上げると決意したように瞼を閉じる。
早く味わいたくて仕方なかったあの頃と違って、この重なるまでの数秒にも愛しさを感じるようになったこと、気が向いたら話してやろうと思った。
2013/09/10
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