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 一生懸命恋人らしい姿をカメラにおさめようとしている彼女。そんな彼女を見て笑ってしまった。

 やっと最後の一枚になったらしい。別に何したってわけでもないのにちょっと疲れた。

「あのね、シン」

「ん、何?」

「ちゅープリっていうのが欲しいの。だから、キスして……?」

「!」

 まじでなんなんだよ。こいつからキスをねだられることなんてあるんだ……
 驚いてる間にも時間は無くなっていく。彼女が早く、と口にした瞬間、迷っていたことが吹き飛んだ。

 彼女に唇を重ねた時、シャッターが切られる音がした。

「ん、シン、もう」

「まだダメ」

 らくがきコーナーに移動しろとか、プリクラ機が言ってるけど知らない。彼女を引き寄せて唇を貪る。もっと深く、もっと味わいたい。だけど彼女は離れていく。

「っはあ、シンのバカ……」

 赤い顔して抗議しても無駄。足りないけど、時間もないらしいから仕方なく移動してやる。


「なんだよこれ」

「え、デカ目機能だよ?」

 明らかに本人の目よりデカくて気持ち悪い。消せる機能ってのがあったから外してやった。目のサイズが元に戻って安心。

「何で無しにするの?」

「こんなの無くてもいいだろ。……普通の方が可愛い」

 ぼそっと言ったらなんか赤くなってた。もう一回ってせがまれるけど勿論却下。そんな恥ずかしいこと二回も言えるか。

「あ……このシン……」

「?」

 彼女の方を覗き込むと馬鹿みたいに弛んだ顔をして彼女を見つめるオレが写ってた。
 最悪。恥ずかしすぎるだろ。何でそういう微妙な瞬間撮ってるんだよこの機械は。

「ふふ、シンこんな顔して見てくれてる時あるんだ。嬉しいな」

「恥ずかしいから顔隠して」

「えー、待ち受けに――」

「絶対やめて」

 渋る彼女をどう説得してやめさせるか、考えていたら、唐突にやっぱりやめると意見を変えて見つめてくる。

「待ち受けにして誰かに見られたら嫌だなって。だから、私だけのシンにする」

「…………おまえ、ほんと反則技上手すぎ」

 これで家まで我慢しろとか……
 無自覚でそういうこと言うから困る。
 プリクラとか訳わかんないし、適当な事言うとこいつはむくれるし、微妙なもん写るし最悪と思ってたけど、こういうのですぐ別にいいかもなと思う自分も単純だよな。



「先輩プリ撮ったんですか!? よくシンを連れ込めましたね! ものすごーく嫌がりそうですもん!」

「あの子、何でもないフリして絶対携帯の電池パックカバーの裏に貼ってるタイプだよねー」

 バイト先に迎えに行ったら、ミネとサワがにやにやしながらこっちを見てきた。
 彼女のあの口の弛さ何とかならないかと思ったけど、物凄く幸せそうな顔してたから黙っておくことにする。


 2013/09/03




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