あの子達(サワ視点)





 いつからだっただろう。あの子の彼氏であるシンを目で追うようになってたのは。


「これがいいんじゃない?」

「ほんとだ。これ可愛い」

 色違いのカップを選ぶのにあの子と一緒に買い物に来ていた。
 八月に私が手を滑らせて割っちゃったから。そのお詫びに私がこの子にプレゼントするものを選んでもらってる。
 カップを見つめるこの子の目は至極愛おしげで、今すぐにでも家に招いて振る舞いたいって顔に書いてあった。


『犯人探し、サワにも協力してほしい』

 ふと山荘での事を思い出した。私に頭を下げてくるシン。
 シンがあの子を突き落とすなんて考えられなかったから、二つ返事でオーケー出そうと思って踏みとどまった。

『それ、シンの為に私が動く義理無いよね』

 そう、ここで頷いたら私はシンの為に協力したって、あの子を裏切る事になってしまう。
 確かあの子の前でいくつか零してしまったから。

 例えシンを好きでも私には望みが無い、とか。シンが帰ってきて、あんた達がカップルらしくなったらシンの事考えなくて済む、とか。
 実際好きだったしね。今はこの子の笑顔を見てる方がいいけど。

 シンを目で追うようになってたのは高校の頃だった。
 この子の幼馴染で生意気で偉そうなクソガキ。凄く年下って感じだった。

 それが急にあの子を見つめる目が変わってた。愛しくて好きで好きでたまらない。そんな熱の籠もった目。
 あの子は何故か他の男の好意にはすぐ気付いて躱すのに、シンの視線にだけは鈍くて気付かなかった。

 でもそれは違ってた。
 シンが部室に来た時、ライブの後、予備校帰りのシンと鉢合わせた時、真っ先に笑顔を見せて駆け寄っていたから。

 シンの好意だけは嫌じゃなかったんだって、本能が受け入れてるんだって分かった。
 そんなこの子に勝てる気なんてしなかった。

 あの子を大事そうに扱うシンを見てると羨ましかったんだ。
 私もこんなに愛されてみたいと思った。

 生意気なクソガキが男に変わっていく過程は私にとってそれだけのインパクトがあった。
 良い男は転がってるもんじゃなくて、女が変えていくもんなんだなって。
 それから、この子も恋をして以前に増して可愛くなった。

「あんた今度こそしっかり幸せにしてもらいなさいよね!」

「? うん!」

 私の大事な親友。私だっていつか誰かと幸せになって、胸張ってこの子に紹介出来る日が来たらいいな。


 2013/02/23





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