傷の癒やし方
「シン……?」
学校からの帰り道、アイツが声を掛けてきた。タイミングが悪い。どうしてこうも会いたくない時に知り合いに会うのか。
「どうしたのその傷! 早く手当てしないと!」
「いいよ。そのうち治るだろ」
大袈裟に捲し立てられるのがうざくて適当にあしらうとコイツは眉を吊り上げた。
いつもいつも、表情だけで何考えてるか分かり易すぎるんだよ。
やっと成長期で身長を抜かした後でも、コイツが着てるのは高校のブレザー、オレが着てるのは学ラン。それは越えられない大きな差だった。
「今日シンのお母さんいないんだっけ? うちも忙しくて誰もいないけど、救急セットくらいあるから寄って?」
「姉貴面うざい」
「はいはい。行くよ?」
姉貴面も何もコイツが年上なのは間違いない事なんだけど。
たった一つでもそれがどれだけ大きいか見せつけられるようで苛立った。こういう対応が子どもなんだって分かるけど。他にどうしていいかオレはまだ知らない。
半ば無理矢理コイツの家に連れて行かれて、無理矢理ソファーに座らされたかと思えば、救急セットを漁る年上の幼なじみ。
消毒薬と絆創膏を発見したコイツは一瞬勇ましい顔つきになってから、またオレに向き直る。
「シン、じっとしててね?」
「むしろ、なんで暴れなきゃいけないんだよ」
「ふふ、昔は消毒薬痛くて逃げてたのに」
コイツといい、トーマといい、いつの話だよって話を持ち出したがる。
傷口に消毒薬が触れて痛みが走る。少し顔をしかめると何故かコイツは笑った。なんだよ。暴れてないだろ。痛いのは事実なんだよ。
「はい、出来た。一日に何回か変えないと痕が残ったりするから、ちゃんと消毒してね?」
「痕とか女が気にする事だろ」
「でもシンは色白いから目立つよ。傷残ってるの見たら私が悲しいし」
何でコイツがオレが勝手に作ってきた傷で悲しむわけ。
コイツは全く関係ないし、今回だってまだ親父の件で変な奴に絡まれたから、言葉でかわしてたら手出してきたから殴った。んで何回か攻撃受けたけど片付けて帰ってきた。正当防衛だ。
「おまえは関係ないだろ」
「関係なくないよ……シンは私の大事な……」
「何」
「っ、ううん。とにかくシンが傷付くのは嫌だよ」
何を言おうとしたのか、問い詰めてもいいけど。それ以上にオレは喧嘩の後で機嫌が悪くて不貞腐れていた。傷が痛い。
「シン」
「?」
「シンは私の大事な、幼なじみだから。絶対に味方だからね」
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