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「きゃっ」
「あのさ、オレがお兄ちゃんだからっておまえは何か勘違いしてるよな?」
肩を掴んで床に押し付けられる。この状況を押し倒されているのだと分かるのにも時間が掛かった。
妖艶な笑みを浮かべて私を見下ろすシンお兄ちゃんが知らない人になってしまったみたい。
「じゃあ、何でキスも出来ないって言ったか分からないよな」
「シンお兄ちゃん余裕だもん。だから、キスしたいの私だけなんでしょ?」
「バーカ。おまえは男にとってキスがどんなもんか全く分かってない」
私の足を割って身体ごと割り込んでくる。男の人だ。力が強い。全然動けない。
「キスごときで満足だって言える男が世の中に何割いるのか知りたいよ。少なくともオレは無理、満足出来ない。少しでも触れたら全部欲しくなるに決まってる」
その意味が分かると顔が熱くなってくるのを感じた。
シンお兄ちゃんが掴んでくる手が熱い。変に熱くて汗をかいてくる。
「お兄ちゃんだったら大人だから余裕だと思った? んな訳ねえよ。いつだってギリギリだっての。ましてや好きな女にまともに触れられもしない今の状況、まじで頭煮えそうだから」
「う……私、シンお兄ちゃんになら何されても平気だよ? シンお兄ちゃんが――」
先を紡ごうとすれば唇に指を押し付けられる。
シンお兄ちゃんはいつもの意地悪な笑みで私を起こしてくれた。
「震えながら言うなよバーカ。おまえがまだ子どもだから安心して手も出せない」
「子どもじゃないよ……!」
「そうだな。身体は女だから困るんだよ」
「っ……」
付き合うならそういう事にもなるって分かってたはずなのに、いざシンお兄ちゃんに組み敷かれると凄く怖かった。好きでも身体が追い付かない事もあるんだって、身を以て理解した。
「だから、卒業するまでに覚悟しとけよ。めちゃくちゃ待たされてるから、ちゃんとおまえに合わせてやれる自信無いから」
「う、うん……!」
「だから――」
口をシンお兄ちゃんの大きな手のひらで覆われたと思えば、ちょうど唇辺りの手の甲の上にキスをする。
直にされた訳じゃないのに、シンお兄ちゃんの閉じられた長い睫毛を見るだけで馬鹿みたいにドキドキした。
「……今はこれで勘弁して」
至近距離で見た優しい笑顔が止めを差してくるみたい。
だから沸騰しちゃいそうな頭で一生懸命頷いた。
「私、頑張って大人の女になるから……!」
「はいはい。つーか、オレが女にするから」
やっぱり、何を言っても勝てないみたい。私のシンお兄ちゃんへの挑戦はまだまだ続く。
2013/04/28
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