ケント誕!!
2013/09/23
「ケントさん、ご飯出来ましたよ……あれ」
ご両親が不在だと聞いて、なら私がご飯を作りに行きますと約束した日の夕方のこと。
夕食の仕度を済ませてケントさんを呼びに行くと、ケントさんは分厚い本を枕に寝てしまっていた。
最近また研究が大変だって聞いたから、ロンドンに行く為に以前にも増して頑張ってるから、いつもよりも疲れてしまってるのかもしれない。
「ふふ、可愛い……」
私よりもずっと年上で大人の男性なのに、寝顔は幼く見えて可愛らしく見えた。
眼鏡掛けたままだったら寝にくいんじゃないかな。そっと眼鏡を抜き取ると幼い寝顔が更に引き立つ。
もう、可愛くてたまらないですよ。ケントさん。
「ひゃ!」
眼鏡を近くに置いた瞬間、腕を掴まれて小さく悲鳴を上げてしまった。
ケントさんがうっすらと瞼を持ち上げて、私を見上げて何度か瞬きをする。
「君か……そうか。私は寝てしまっていたのだな」
「はい、ご飯出来てますよ」
眼鏡を探していたので差し出すと、まだぼんやりした様子で受けとってくれる。
「ああ、いただくとしよう……」
「?」
立ち上がったケントさんが私を見下ろして静止する。何か考えてるのかな。見つめ合っているとケントさんは突然頬を赤らめた。
「いや、今の流れがまるで夫婦のようだなと思ってしまって……すまない。君はそんなつもりじゃなかったかもしれない」
「いいえ、きっと同じことを未来にケントさんにしてると思います。予行演習ですね」
「そ、そうか……なら良いんだ」
冷めないうちにどうぞ、とケントさんに背を向けた時、肩を掴まれて立ち止まる。
「ケントさん……?」
振り返るとおでこにケントさんの唇が触れて、瞬く間もなく私は赤面することとなる。
「えっ、ケントさん!?」
「! いや、その! 夫婦ならばこういう流れもあるのかもしれないなと!」
わたわたと慌てふためいた本人が一番恥ずかしがっていて、やっぱりこの人はすごく可愛い人だなと微笑んだ。
「ケントさん、なら唇にしてください」
「っ、私はいつまでも君には敵わないな」
顎に添えられた手から緊張を感じる。ケントさんの胸に手を置いて背伸びして、ゆっくりと近づいてくるケントさんの不器用なキスを受け止めた。
「ケントさん、夫婦になってもちゃんと愛してくださいね」
「ああ、勿論だ。ずっと君を愛していくと誓う」
左手の薬指に光る婚約指輪に未来を垣間見ながら、もう一度唇を重ねる。
2013/09/23
ケントさんお誕生日おめでとうございます!!