転校生がやってきた。重ための前髪で、でもその下の目はつりあがった猫目で、めちゃくちゃ、タイプの子だった。で、性格もさばさばしてて、けっこう腹も座ってて、生徒会長とかも一喝できるような子で、めちゃくちゃ、きゅんきゅんした。
 話しかけたかったけど、俺は俺で生徒会会計で、親衛隊とかもついてて、チャラ男会計って噂も立てられてたし、なかなかに無理だった。
 そんなある日、転校生の机の横を通ったとき、うっかり転校生の鞄をひっくり返してしまった。慌てて片していたら、そのなかに、まさかの、

ル〇ー文庫

があって。まさかの、まさかの、腐男子転校生!!俺はなんか、俺もいける気がして、おとめちっく手紙を書いてルビー文庫に挟んで戻した。




 「で、なに。」
 「えっと、その、あの、」

 放課後、教室に残ってもらうようにしたら、めたくそ機嫌悪そうな転校生が…ひぎぃ。
 俺はもじもじ爪先を弄りながら切り出した。

 「あ、あの、小向くんって、あの、ふ、腐男子なの…?」
 「まぁ、カテゴリー的には。で?」

 小向くん、転校生くんは雑に肯定した。冷たい、すき。俺は緊張で口ん中ぱっさぱさにしながら切り出した。

 「かっ(口内の水分足らなかった)…お、おれ!俺みたいの…ど、どうかな…?」
 「あ?」
 「お、俺みたいな、そのぉ…」

 どうしても最後まで言い切れずもじもじすると、小向くんは苛立たしげに踵を鳴らした。

 「あのさぁ…」
 「っん…?」
 「お前さ、腐男子、腐女子全員がてめぇみてぇの好きだと思ってんのか?あ?」
 「っふへぇ!!?」

 なんかえらい方向に小向くんは怒ってるようだから、とりあえず黙っといた。おたくこわい。

 「腐女子腐男子が全員学園モノが好きだと思うな。いや好きだぞ!?学園パロも大好きだぞ!?
 だけどな、BLの世界は学園という狭い塀の中に限られない。例えばオフィス、特に俺が好きなのは男やもめの先輩上司にワンコ後輩が押し掛けてくるタイプなのだが、これは後述する。次に、異世界、転生ものなんかも該当する。それから…」
 「(ついてけない…)」
 「…と、いう訳で、俺はお前に全く興味がない。以上だ。」
 「ちょっ!!?」

 小向くんの講釈を聞き流してたら、どうもフラレたみたい!やばいこんな失恋きつすぎる!!俺は去ろうとする小向くんに追いすがった。

 「待って待って!リアルでは!?リアルではだめ!?」
 「リアルなんかもっと無理だ。女の子が好きだから。」

 やだー!!こんな現実やだー!!!学園モノの転校生が女の子好きなんて普通の現実やーだー!そんなこと、こんなとこで言わないでぇー!!!も、もう俺肉体言語しか頼れないよ…ど、どーてー…なのに…。めちゃめちゃ手震えてたけど、精一杯セクシーに髪かきあげた。

 「お、おれ!経験豊富だから、た、試しに、ど、どぉ…?(嘘。童貞処女)」
 「うわ、まじで会計ってヤリ〇ンなんだな。」

 小向くんから、一瞬で食品サンプル作れそうなほど凍てつく視線が。あ、吐きそう。泣きそう。あ、あかんやつだ。

 「うっ、うっう…わぁああんっ!嘘だよごめんなさい見栄はりましたぁー!!ごめんなさい、す、
 …す、すきですぅ、小向くん一目惚れで…ど、どうしても、だめですかぁ……?」

 泣き落としでなく、まじで泣けてきた。緊張で吐きそう。そしたら小向くんはちょっと顎に手を当てて、首を傾げた。

 「お前さ、チャラ男会計ってか、ただのへたれワンコじゃね?」

 わかんないよぉ、そのカテゴリー。わかんないから付き合ってよぉ。



おわり





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