中古ビッチの後、きよくん視点。


 ああは言ったけど。

 タイプというか、今まで付き合ったことのある子、好きになった子の傾向を見ると、俺は清楚かつ真面目な子に惹かれていたようだった。
 そもそも体から始まる恋なんてしたことがない。初カノとは一年何もしなかった程だ。

 「んー…」

 必死に珈琲を冷ましてるのを見る。まず見た目。今はセットされていないからへたれているが、ウルフカットされた髪にランダムにパーマが当たって、ルーズな印象を受ける。そもそも髪色自体かなり明るくて、どう頑張っても清楚とは遠い。遠すぎる。
 目元はくっきり二重で、一重の俺としては羨ましい。瞳の色はかなり茶色みがかっていて、それと合わせると髪色も不自然ではないように感じた。

 「あちっ!」

 またしても猫舌に苦しんでる。むっとした顔でマグカップを見つめるその口。唇をつきだしてあひる口。おお…男のあひる口って初めて見た…しかも似合ってる…あざとい…。あざとい…。

 「ゆっくり飲んで。また火傷するよ。」
 「えっ!あ、大丈夫…!あの大丈夫!うあ!あつっ!いや大丈夫!大丈夫!!」

 話しかけると、一気に表情が変わった。俺はどちらかと言えば人見知りして、コミュニケーションに長ける方じゃない。でもそんな俺にも分かった。話しかけられて喜んでるのが。
 真っ赤になった顔、緩んだ口、涙ぐんでる目元から。猫がぴんと尻尾を立てるよりも明白だ。

 『かわい…』

 ビッチなのに、清楚な女子中学生ばりの狼狽えを見せる。俺が見てるからか、悪戦苦闘しながら珈琲を飲み干した。そしてこっちをちらちら窺いながら、言うべきか悩んでいる。

 「あ、その、その…」
 「ん?」

 もじもじと言いよどんでいる。今度はなんて言うか当ててみようか。んーそうだな…きっとこれが正解。

 「あんま見ないで、勃起する」
 「あ、あんま見ないで…勃起しそぉ…」

 ぴったり当たった。当てられた方は俺に同時に言われて恥ずかしそうに下を向いた。あんまりにも率直でわかりやすい好意に、思わず笑った。

 この好意はさっきまでの余韻のせいかもしれない、まさかとは思うが、このビッチな彼が、このまま半年、いや三ヶ月でもこうやって好意を示してくれたら。

 『いや、ないとは思うけど。』

これほどまで好きを与えられたなら、俺の人生は結構満ち足りたものになるんじゃなかろうか。

 「かわいー。」
 「かっ!かわ!そん!そんな!」

 例えの話。もし、もし本当に、俺を好きになってくれたなら。俺も本当に好きになってあげたい、なんて。

 「そんな、俺、あの、あの…」

 あんなに泣いてた。好かれたい、好かれたいと。じゃあ、俺がただ好きになりたい。好かれたと喜ばせてあげたい。きっと泣くほど喜ぶし、俺はそれが見たい。それに喜びたかった。
動機は同情2の、残り8は自分でも不透明だ。

 『なーんて…』
 『ないな。』
 『おサセに夢見すぎ。』

 そう自嘲気味に笑おうとすると、俺の唇に何かが当たった。
見ると、件のおサセが唇をくっ付けている。あの時は夢中で分からなかったが、柔らかくて何故か甘い気がした。

 「あんま…からかわないで…あの、俺、マジになっちゃったから…っ!」

 さらに真っ赤になった顔でそう告げられる。マジって…

 「え、あ…」

マジで?


おわり




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -