※各種パズルを貶してますが、パズルを貶してるのではなく、擬人化したキャラクターを貶しています。
パズルがアイドルやってて、作られたパズルが新曲みたいなイメージ。推理パズルちゃん嫌われ。


 こんにちは!僕、推理パズル所属の一応アイドル…、路地太郎っていいます。あ、ロジックパズルって言ったほうが正確かな…。
あの、その、ぼ、僕のこと、知ってますか…?あの、その、僕は髪型もダサいし、瓶ぞこ眼鏡だし、その、パズルっぽくないし、その、あの、でも一応掲載雑誌もあるし実績のある歴としたアイドル、の、つもり、なんですけど…。



 あの、無言でwiki見ないでください…。悲しいので、自分で引用します…。

 「ロジックパズル(論理パズル、推理パズルともいう)は、文章で出される問題文に対して、論理的な解答を出す形式のパズル
。単純な計算問題は通常含まない。一般的な「パズル」の概念とは異なることから論理クイズとも呼ばれる。」
(以上、Wikipediaから引用)

訳わかんない…あ、そ、ですよね…あ、じゃあじゃあ!パズルらしく一問出してみますね!簡単な例題です!

 「ここは生徒会の事務室です。手違いで部活動の記録がバラバラになってしまいました。以下のヒントから、誰が(A、B、Cくん)、何部(バスケ部、卓球部、野球部)で、大会の成績は何位(1位〜3位)だったのか、を当ててください。

資料1→AくんはCくんより順位が高い。
資料2→二位になった生徒は卓球部だが、それはCくんではない。
資料3→一位はBくんではなく、また一位を取れた種目は野球ではない。」

 ふ、雰囲気伝わりましたか?これは簡単なほうで、難しくなると誰が、何部で、何位で、賞品は何で、大会場所はどこで、そこまでの移動手段は何か、…みたいな項目を一辺に当てなきゃなんなくなります。で、で、そういうときに役立つのがこのマトリックスで…あ、も、もういいですか、で、ですよね…こんな底辺アイドルの出すパズルなんか、いらない、ですよね…。

キャアアアーッッ!!

 な、何、悲鳴…!?なんだろ、何かあったのかも、僕見てきます!



*



 キャアアアーッ難波サマーッッ!ののくんこっち向いてーっ!交さん今日も素敵ぃーっっ!

 悲鳴だと思ったのは、どうやらファンの歓声だったみたい…。す、すごいなぁ、何のイベントか知らないけど、難波さんたちがたまに一同に集まると歓声が…。歓声が低い唸り声みたい。
 あ、難波さんたちはパズル界では知らない人のいない、超超超人気の売れっ子アイドルです。

 「ほら、今度は45×30のでっかいの!縦横確認して付いてきて!」

まず、ののくんさん。正確にはイラストロジック、お絵かきロジック(ロジックパズルってここ被るから名乗りにくいの…)パズル所属の、売れっ子若手アイドル野々らむくん。
そのかっこかわいい王子系の甘いマスクと楽しくなっちゃうパズルの出来上がりで、幅広い層に人気がある。カラロジ(お絵かきロジックの複数色使用版)もやってて、そのキラキラな髪型は日によって色を変える。今日はきついピンク色、そんなんが似合っちゃうあたり、イケメンってすごい。

 「さて、昨日は漢字、明日はカタカナ、明後日アローで、今日は…どうします?」

次は交(まじる)さん。クロスワード所属の、大人系フェロモンアイドル言葉(ことのは)交さん。
涼しげな目元と、そこに添えられたシャープで細い眼鏡が知的でセクシー。さらに交さんは超実力派で、作れるパズルの幅がとんでもなく広い。漢字、カタカナ、アロー、ナンバーポイント、ここにスケルトンが入った日にはパズル全員お手上げ。お婆ちゃんから幼稚園児まで交さんにきゃーきゃー言ってる。今日も黒スーツがびしっと似合って、若干ホスト感あるけど…。

 「お前らぁっ!全員俺のパズルにひれ伏せぇえーっっ!」

そして大トリ。難波さん。ナンプレ、数独所属の、世界的大スター難波独さん。
その精緻なパズルとは対称的に、長いことトップを走るプライドからか、見た目は年々野性的な匂いを帯びる。もともと外国の血が流れているからか、色素の薄い金髪や瞳(交さんも僕も外国産まれだけど、日本語に依存してるから黒髪黒目)。それをスパイキーなベリショにしてるとこが男らしくて…相変わらず素敵…。そのワイルドで高圧的な態度、有無を言わさず無駄の生まれないパズル!数の生み出す美しさ!……あ、あ!実は、僕も日本でアイドルやろうって思ったのは、彼に憧れたから、だったり…。お、おこがましい、ですよね、ごめんなさい。

 「なんだかなぁ…」

向こうの喧騒を、僕は遠目に見る。
彼らの周りには女の子の人だかりが出来て、出すパズルみんな競いあって解かれて…。キラキラ輝いてて、楽しそうで、僕は。僕だって、本当は、本当は、

 「…っ」

羨ましい。
…いいな、いいな、羨ましいな、いっぱい新しいパズル作ってもらって、専門じゃない雑誌にも載せてもらえて、それで、たくさん…解いてもらって、面白い!って言ってもらえて…。
ああいうのが、アイドルって、言うのかなぁ、僕なんて、自分のパズル一つ、解いてもらえない。

 「僕は…」

僕だって自分の身の丈は分かってる。僕はアイドル向きじゃない。それでも、

 『謎が解けた!これで全部!』

僕がいいって人に会うために、その人に謎を解いてもらって、そして、笑顔にするために、僕はアイドルやってるんだ。
僕を解いた誇らしげな顔、それだけが僕の心を満たすんだ。

 「頑張ろう…僕だって、僕だって、」

だから、僕は、僕のパズルをやる。彼らとは違う、言葉のウラを使ったパズルで、僕のファンを名探偵にしてみせる!
そう、両手を握りしめて再確認した。



 「おい路地。お前こんなとこで何やってんだよ。あいっかわらず鬱陶しい。」

 僕が物思いに耽ってる間に、難波さんたちがイベントを終え、僕のもとにやってきた。う、こうやって並ぶと、僕この中で一番背低い…。
難波さんはゴミでも見たかみたいな目で見てくる…唾吐きかけられなかっただけマシクラスの嫌悪を顔を出すなんて、ファンが見たら失望するだろうに…。胸が痛い。

 「あっはは、何そのダッサイ眼鏡〜!そんなんだから人気でないんですよーっ!あははははっ!」

この中で実は最年少のののくん。だけど僕に対する敬意なんか微塵も見せず、僕を指指して笑った。そのベビーフェイスの下の腹黒さにかちんとくる。

 「はぁ…同じ言語を使ったパズルといえど、君のその醜さは軽蔑に値します。」

交さんは辞書を開きながら、すごく忌々しげに呟いた。僕は僕なりに一生懸命やってるのに、視界に入れようともしない。泣きそうだった。

 「それじゃ俺たちこれから雑誌の打ち合わせだから。」
 「あははははっ!路地さんちょーかわいそーウケるーっ!」
 「のの五月蝿いです。…路地もこんな所で突っ立ってないで早く帰られたらどうです?」

 僕は遠ざかっていく彼らの背中を見ながら、唇を噛み締めた。



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