オタク×女装不良
今日僕はコスプレイベントに来てる。ちなみにコスプレする側じゃなくて、コスプレしてる人を撮る側でだ。
今回のコスプレイベントは、主にコスプレROMの販売と、その購入によって得たチケットを持ってブースでの撮影の二本柱で成り立っている。
最近買ったばかりのカメラを握り、開場前の待機列の中でカタログを捲る。
「えっとまず、〇さんとこと、×さんとこ。@さんとこは友達に頼んであるし、うーん、なんか新規開拓しようかな」
こんだけ並んでも最初からのお目当ては2サークルあるかないか。せっかく来たんだから、新しいサークルさん開拓したいじゃん。サークルカットをぱらぱら眺める。
「あっ、××きゅんメインのサークルさんだ。衣裳丁寧だし、あー…カットじゃ顔わかんないな。んーでもお尻めちゃくちゃいいから行ってみよ!」
ひとつ、目につくサークルさんが。僕の大好きなゲーム、でもけっこう古いマイナーゲーム、その中のキャラをメインに据えたサークルさんがあったのだ。
サークルカットは、そのゲームのヒロイン、××きゅん。ミニスカートとニーハイ、衣裳はちゃんとディティールにこだわってるのが伝わってくる。
そのサークルカットは、カメラに背を向け、ソファに立て膝で座り、こちらにお尻を見せつける、えろい構図。見せつけられてるお尻はぷりんぷりんでぱつぱつで、柔らかそう。でか尻すきの僕的にいい感じ。
どんなこだろ。
開場と共に、そこは戦場と化した。みなお目当てサークルに向けて闘志を剥き出しに競り合う。そうこうして僕もとりあえずお目当てだけは買って、例の××きゅんサークルさんのとこへ向かった。
「どうもありがとう!またイベントくるから次もきてね!」
××きゅんのサークルはマイナージャンルでも中々の盛況を見せていた。列に並んだ為、サークル主本人の顔は見えないが、声は少し聞こえる。思ったより低い?でもかわいい。
サークルポスターをよく見ると、男の娘の文字。ああ男の子か。どうりで。
はい?ショック受けたかって?
かわいければ無問題!!!
ちんこ付いてるか付いてないかなんて些末なことっすよ。ふふ。
そうしてやっと僕の番になり、サークルROMを手にとる。うお、顔もいいじゃん。今度から行き着けサークルにしよ。
「すみません3枚くださ、」
コスプレROMを手に顔をあげ、実際にサークル主の顔を見て僕は固まった。××きゅんのコスプレをして、ちょっとえっちに着崩して、媚びたように笑ってるサークル主が、知った顔だったから。
「…………あれ、江崎、くん?」
「は…っ!?…………あっ、おま、湯原……っ!!な、なんで、ここに…っ!」
江崎くんはクラスの鼻つまみもの、要するに素行不良の問題児だ。やれどこと喧嘩したとか、やれ学校の一階にバイクで乗り付けたとか、やれ職員室に爆竹ぶちこんだとか、そういうやんちゃボーイなのだ。
そんな訳で、顔をしげしげ見たことはなかったけど、けっこう化粧映えするんだ。男で骨ばってしまう関節はうまく隠してるし、それにあのぷりんぷりんケツ。男であのプリケツはかなりゴイスー。
そうして僕が江崎くんを観察してると、観察される側は珍しく困ったように視線をさ迷わせてて、時たま睨み付けてきたりもして、なんか知り合いがえっちコスプレROM売ってるっていうエロさ。
「あの、撮影ブース行きません??」
「っ!あ、はいー」
また猫かぶりモードになった江崎くんを連れ、コスプレ撮影ブースへ!(仮)
「ざっけんな湯原てめぇなにしてんだよこんなとこで!」
「それはこっちの台詞だよ!江崎くんこそ!なにやってんの!?」
こっそり話すために、トイレへ駆け込み小声で口論。かわいくても中身は江崎くんだった。さっきまでの媚び声なくなると、一気に江崎くん。げんなりかと思いきや、逆にありな気がしてきた。
「おい、誰にも言うなよ、言ったら殺す」
「コロ助なりよー。そんなプリケツで凄まれても…」
「ふざけてんなよっ!」
江崎くんは真っ赤な顔で媚び媚び丈のミニスカを引っ張ってパンツ見えないようにしてる。なにこれぶひぶひ。…もうあれっすかね?あれっすか?鬼畜眼鏡モードいきます?いきます?
「でもさぁ、江崎くんがこんな変態だなんて知らなかったー。だって僕が来るまで知らないオタクにお尻撮らせたり見せたりしてたんでしょー?」
「ちっちげぇよ!人を露出狂みてぇに言うな!俺は、その、このゲーム、好きだから、その、その、それで、ゲーム好きな人と話したかっただけで、」
往生際がわるい!
「それは違うよ!(論破)」
「っ!」
「えーそうなのー?だったら男キャラやればよくないかなー?んー?な、ん、で、そんな男に媚びた衣裳で、女キャラのコスなのか、ろ、ん、り、て、き、に、説明してー」
江崎くんはこっちを睨み付けながら、でも時たま不安そうに、でも時たま興奮したように、目をうるうるさせる。
「た、確かに、昔は他のキャラやってたけど、それじゃ、人気でねぇんだよ……。やっぱ、やるなら誰かに見てほしぃし、だから」
まだ言うか!
「倍返しだ!」
「なにがだっ!?」
「おかしーよ江崎くん。だってさぁ、人気欲しいからって、そっちの方向性選ぶー?手っ取り早く腐人気とれるのとかでも良かったんじゃないのー?江崎くんそっちのが特性ありそうだしー?な、ん、で、」
「くっ!やめろって湯原!ざっけんな、ぜってぇ次あったとき、シメ、ひっ!」
「男人気とりいったの?」
江崎くんをトイレの壁にどーん。明らかに江崎くんは答えに窮してた。だから、僕が教えてあげよう。江崎くんは、いつもの牙がとれ、子ウサギちゃんみたいにふるふるして、でもどっか期待してて。
「江崎くんは、男に写真撮られるの、好きなんでしょ」
「ちがう…」
「江崎くんは、男にえっちな写真見られてオナネタにされるのが、大好きなんでしょ」
「ちがぁう…」
「江崎くんは、男にカメラ越しに欲情剥き出しの視線向けられるので、スカートの下濡らしちゃうんでしょ」
「そんなんじゃねぇ、ちがう、ちがう、もん…」
もん、って。壁ドンしたまま、耳に口くっつけて話す。
「江崎くん、お化粧かわいい。自分でやったの?」
「ん……うん、自分で、やって、る、も、いいだろ、かんべんして、いじめるなよぉ」
「衣裳も?自分で?」
「……うん」
「……めちゃくちゃかわいい」
「……ひっ!ん、んぅう、やら、か、かっ!かわいい、って、言って」
顔を見ると、うっとりしながら髪をくるくる指に巻き付けてる江崎くん。そっか、こういうの、好きな子なんだ。かわいいかわいいされたいから、性対象にされてもオッケーだし嬉しいタイプ。くそちょれぇヤリマンタイプだ。
「かわいい。お人形さんみたい」
「はう、う、そう、だろぉ、おれ、かわいい。もん、なぁ」
いつの時代もツンの殻を剥くと、中はデレデレのが出てくるもんです。すごく嬉しそうな江崎くん見てると、ガチで股間いったくなってきたー。なにこれ、ヤンデレ(ヤンキーデレデレ)の時代きた?
つづく