7.動揺

 ランが、そう言いながらふと、視線を感じて振り向くと、いつの間にかりゅうたんを追ってここに来ていたらしいレンズが、固まっていた。

「あ……わ……わ……ランが、ランが! 裸の魚人族と、抱き合ってた!」

「……違う。一方的だ」

「大変だっ!」

「違う……」

ランが必死に弁解するが、パニックな彼女には聞いてもらえない。りゅうたんは、それを見届けたかのように、バサバサと飛んでどこかに行く。魚人族と呼ばれた者だけが、きょとんとしていた。

「なあ、猫。この人は誰だい?」

輝く白の髪をふわりと揺らし、ランに問う。

「おれは、ランだ。猫じゃない」

「いいや、きみらの名前なんかに興味はない。ただ、見たところ、魔力がおありだから、敵なら敵と、すぐに聞きたいんだ。急げば逃げられるからね」

「……本人に聞け」

ランは、レンズをその者のところに引っ張って行き、目の前で会わせる。
レンズは興奮ではしゃいだ。

「……魚人族の人って、レー様、始めて見た! そういや師匠が言ってたもんな。魚人族は、綺麗な髪をしてて、鱗や瞳が高値で──」
「ひいっ!」

魚人族、と呼ばれた者が怯える。

「冗談冗談。私、レンズ。世界を見通すための呪文を作っているの。魔術師見習い、研究中だよ。だからお金が必要で──」

「やはり僕の敵か」

「いや、魚人族は、師匠がお世話になったって聞いてるから、我慢するよ。あなたの名前は?」

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