6.挨拶と誤解

「わかってくれるのか! きみはなんと素晴らしい!」

その者は、濡れているし、ほとんど裸だった。美しく長い髪でもさすがに隠せない部分も多い。

その姿で、ランの腕をしっかり捕まえると、唇を、ランの口の中を吸うように合わせた。
ランは驚きで思わず爪が伸び、身体中の毛が逆立つ。
「……ひっ、な、にするっ!」

「おや。古しくゆかしい挨拶だが……? 驚いたか。 空気がなければ我々は死んでしまう。空気は大切なものだ。だから、自分の空気を送り込むということで、あなたに敬意を表しますという──」

「さっぱり意味がわかんねぇよ……」

「ふむ。その反応は、人間という生き物にそっくりだな。エサを口移しする親猿や、親鳥なら、このことでそのように照れないだろう──きみは、人間の社会に居たことがあるね?」

「そうだ」

「そうか。人間は好きか?」
「──もう忘れたよ。そんなこと。ずいぶん昔だ」

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