3.鉢植えの親友

話しかけながら、嬉しそうに鉢を抱えているランは、ヌーナが複雑そうにそれを見つめていたのに気付くと、嫌そうに睨み付けた。

「毒になんかさせない」

「しないわよ。触らないし」

 それを聞いたヌーナも不愉快に顔を歪める。なんでもそうやって毒にすると思われるのは、寂しい。

 地元の一家にそう思われて、地元を出てきたからこそ、ランにそんな風に言って欲しくなかった。

「……こいつ、芽が出てもう少し大きくなったら、森に植えてやるつもりなんだ。その前に、ヌーナの呪いが無くなればいいけど」

ランは彼女の顔色に気付かない。ヌーナは、ただ寂しそうに、ランから目を逸らす。
それに気づいたレンズは、がーっと歯を見せて威嚇するように、ランに言う。

「そんな言い方しなくてもいいじゃん。レー様は知っているよ。ヌーナちゃんだって! 好きでこんな……」
「どうして女子はいちいち自分は関係ないのに群れて庇いたがるんだ?」

「あーもう! そういうことじゃないってば!」

「あのな……これはヌーナの問題だし、おれの問題だ。怒ったり邪魔だと言ったんじゃない。ただおれは、とても大事なんだ、この鉢植えが。だから、その。信用しないわけじゃないが、心配になってしまうんだよ」
ランは、突如間に入ってきたレンズに不思議そうな目を向け、それからヌーナにすまない、と謝った。

「別に、事実を言われたのだもの、謝らなくていいわよ」

ヌーナは少し眠そうにそう言うと、冷やすための氷の入った木の箱を開ける。電力を使わないタイプの、古い冷蔵庫だ。

「へえー、ヌーナちゃん、おっとなー」

レンズは感心した声を上げながら、ミント色の髪をふわふわ揺らす。
ヌーナは冷蔵庫から水のびんを取りだしながら、レンズを見つめた。

「……明らかに事実と違うとか、明らかに向こうの一方的な誤解や、勝手な言いがかりとなれば、私だって怒るわよ。正しいことや、欠点は──つらいけど、ある程度仕方がないわ。直せない私にも落ち度があるもの」

「えー、レー様はそんなのできないよ! 全部怒って、バリバリドカーン!! 問答無用だよ。腹立つもん」

「あなたは良いわね。私も、あなたみたいな強さが欲しかったな」

「レー様も、ヌーナちゃんみたいな冷静な強さが欲しかったよ」

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