17.夢喰いの漠



呪いたち-第2幕 夢喰いの漠


 ヌーナには気にかかることがある。
手に手袋をはめ朝食の後片付けをしながらひっそりと息を吐いた。
 何度も読んだ本にも載っていたが、目指す大陸の途中にはどうやら『夢喰い』という生き物が居るらしい。
その特性から通称は漠(ばく)。 しかも近頃のの漠は凶悪化しており、人の姿にも成り代わり夢を喰らうのだという。

レンズはというと「うまく殺して薬の材料にするんだ!」と意気込んでいる。

「呪いは食べてくれないのかしら……そうだったなら、楽なのに」
皿を拭きつつ、ヌーナは、重たい気分をごまかすように彼女を見た。

「パールと似てて、漠って性別が無いんだって! どんな見た目かなぁ、高く売れるかなぁ」


レンズがちらりと部屋の奥を見ると、パールがそこに立って居た。

「魔法使い、なんの話だ?」

「あのね、夢喰いの漠って子の話! いろんな人に化けて出てきて、あと、性別がないんだって」

パールは何か本を手にしたままゆっくり頷いた。

「あぁ……確かに今、噂になっているね。
漠には性別がないのか。

この僕はあくまでも魚人族だからね、魚人族は群れの雌雄の個体数次第というところかな、あるという意味では在るが、決めていないというところか」

「夢を食べるんだよ!」

レンズは、新しい薬の材料に
わくわくしているらしく、やけに輝いた瞳でパールに話しかける。

「夢、ね。夢など食べられるだろうか?」

「最近は、凶悪化してて、人に成り代わって悪さしてるんだよ」


2019.6.07.21:14




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