14.朝露

 思い始めると、そればかり気になって、ランは、食事の後片付けを始めたヌーナとレンズを置いて、外に出ることにした。

「僕も行く」

パールが呟いて、付いてくる。先ほどレンズにからかわれたことを思うと不愉快だったので、ランはずんずん、とやけに勢いを付けて、彼を離すように走った。
「来んなよ……!」

土を蹴って跳ぶ。彼の右足は、左足よりも若干重くて、ついよろけそうになったが、飛距離について来られる者はそうはいない。
どんどん引き離して森の奥まで入ると、はあ、と息を吐いた。さすがに、疲れた。
 柔らかい日差しが、今日ばかりは腹立たしいし、ピヨピヨと頭上に聞こえるさえずりも、耳障りで刈り取ってむしゃむしゃ食べてしまいたい。彼は森林にいるウサギの肉が特に、好きだ。
なので木をしばらく抜けた先にある茂みを探すのが楽しいと思う。

 しかし、いつもの茂みまで来て、ふと、あいつはどうしたのか、と急に心配になってきた。まさか付いて来られるとは思っていなかったが、しかし、魚だ。陸歩きはただでさえ、不慣れにちがいない。
陸においてはおそらく、人間の強度を下回るだろう。
「まさか、くたばってるんじゃあ、ないだろうな……」
頬を冷や汗が伝う。
舌打ちをして、戻って来てみると、パールは、神殿を出てすぐの草むらで、大きな木の葉の朝露を飲んでいた。自分を追ってはいなかったのだ。

自意識過剰だったかと、恥ずかしくなるが、一方で、あんなことをされて、さらに誤解までされればそりゃあそうなるだろう、と言い訳する自分がいる。

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