11.彼の思い出

 ランは母を思い出し、それから、ふと窓際に飾った植木鉢を見つめた。果たして、再び目覚めたときに《その生き物》は、『自分』を思い出してくれるのだろうか。

「ラン!」

 物思いに耽って(ふけって)いたら、名前を呼ばれ、ひょい、と視界に何かが跳んできた。反射的に左手で、掴むと、それは干し肉だった。
かじかじと音を立てて一心に噛み砕くランは、子犬のように無邪気に見え、思わず、ランに干し肉を放ったレンズも、癒されてしまう。
「美味しい? ヌーナから、今から朝ご飯だってさ。」

「……たまには、干し肉以外も食べたいものだ」

クチャクチャと噛み砕いた肉を味わいながら、ランはそう言い、完食すると、舌なめずりをした。結構気に入っているらしい。

「しょうがないわ、生肉はただでさえ高いのよ」

ヌーナが寂しそうに言いながら、手にしたフライパンを持って、窓際の隅に置かれた、小さなコンロに火をつける。

「魚肉なら、取ってきてやってもいい」

パールがそう言い、窓から僅かに見える川を見つめた。ランは首を振り、呟く。「……りゅうたん、食えねーのかな」

レンズが、がたっと、部屋の中央に置かれたテーブルにぶつかりながら立ち、ダメっ! と叫んだ。

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